小2道徳「あいさつが きらいな 王さま」指導アイデア
執筆/北海道公立小学校・藤原友和
目次
内容項目
礼儀
間違いに気づいた王様の気持ちを考えることを通して、挨拶は相互の人の心を明るくすることを理解し、気持ちのよい挨拶をしようとする態度を養う。
趣旨
礼儀とは、相手に対する敬愛の念を表し、人間関係を豊かにして社会生活を円滑にするために創り上げられてきた文化です。挨拶や所作、言葉遣いなど、具体的な形に示すことが肝要とされています。
心は目には見えませんから、時と場合をわきまえた応対、つまり「形」に真心を込め、相手を親身に思いやることで心と形を一体として表すものとされています。
『小学校学習指導要領 解説』では、低学年の段階においては、「特にはきはきとした気持ちのよい挨拶や言葉遣い、話の聞き方や食事の所作などの具体的な振る舞い方を身に付けることを通して明るく接することのできる児童を育てることが大切」としています。
礼儀の意味やその大切さについて、頭で理解させようとするよりも先に「日常生活を送るために欠かせない基本的な挨拶などについて、具体的な状況の下での体験を通して実感的に理解を深めさせることが重要である」という言及もあります。
発達の段階を考慮しても、言葉によって抽象的に考えさせることよりも、体験的、実感的な理解のほうが大切であるのは納得できることでしょう。
普段している挨拶は、どんな気持ちでしているか、相手の表情はどうだったか、また、相手からされた挨拶でどんな気持ちになったかなど、具体的な場面について考えることが大切です。
そのために、読み物教材を使用する際にも、その場面をロールプレイしたり、普段の生活における場面を考える時にも、その状況を再現したりしながら具体的に考えられるようにします。
使用教材
「あいさつが きらいな 王さま」(日本文教出版 二年)
毎日、朝から晩まで挨拶され通しだった王様が「ええい、うるさい。いつもと、同じ あいさつなんか しなくても いいのだ!」と、怒って、挨拶を禁止するお触れを出してしまいます。
うっかり挨拶をしようものなら、とたんに捕まって牢屋に入れられてしまいます。国中、大騒ぎになりますが、挨拶ができなくなったこの国はいつの間にか暗くて寂しい国になってしまいました。それどころか、挨拶を禁止した当人である王様まで元気がなくなり、暗い気持ちになってしまいます。
そんな王様の耳に、ある日、牢屋のほうから楽しそうな歌声が聞こえてきます。「あいさつだいすき」という歌です。王様はなぜか一緒に歌いたくなるのですが、自分で禁止のお触れを出した手前、そうすることもできずに牢屋の前から逃げ出します。
何日間も考え込んだ王様はようやく自分の間違いに気づきます。挨拶の大切さに気がついた王様は自分の間違いを認め、お触れも撤回してみんなに謝ります。自分から進んで挨拶をするようにもなりました。おかげで、この国は挨拶が飛び交って、笑い声の絶えない楽しい国になる、というお話です。
王様の葛藤と変容を通して、挨拶のよさに目を向けさせる教材です。導入では、普段している挨拶について考えさせます。誰とするのか、どのようにするのか、役割演技を通して、具体的に捉え、周りから見ていてどのような様子か、どのような印象を与えているのか話し合います。
教材を読む時には王冠やお触れを書いた紙(巻物や札)などの小道具を用意して子どもの興味を引くとともに、後半の展開へと伏線を張ります。
展開の前半では、挨拶が禁止された国の様子がどうなったか考えることを通して、挨拶がもつ意義や大切さに気づかせます。展開の後半では、王様の葛藤と間違いを改める姿を通して、「自分も相手も気持ちよくさせる」という価値についての考えを深めます。
この時、間違いを改める王様の姿に「正直、誠実」の価値についての意見が出ることも考えられますが、「王様のそういった姿を引き出すくらい、挨拶するのは素敵なことなんだね」と本時の流れに戻ることができるようにします。終末では、自分の生活の様子を改めて振り返り、実践化へつなげます。
本時の展開
①普段の挨拶について考える。
いつも、誰と、どんな挨拶をしていますか
・家族や友達に『おはよう』って言う
・学校の玄関で先生に『おはよう』って言う
今日、どんな挨拶をしたか、その時にはどんな様子だったか話し合います。
挨拶って必要ですか? 今日は挨拶が嫌いな王様の話です
教材文を読む時には、王冠や札などの小道具を使って、子どもの興味を引きましょう。
②教材文を読み、ロールプレイや話合いを通して考えを深める。
挨拶が禁止されてから、国や王様はどんな様子になりましたか
・暗くて寂しい
・元気がない
・王様も暗くなっちゃった
王様やこの国の人がどんなことを考えているのかロールプレイで表現し、挨拶を交わせなくなって活気がなくなる様子をつかませます。
何かがおかしいと言った王様は、どんなことを考えていたのでしょうか
挨拶禁止の札の前と「あいさつだいすき」の歌詞の前を行ったり来たりしながら演技をさせ、「ぼやき」や「つぶやき」のような形で表現させます。
王様はどんなことに気がついて、自分から進んで挨拶をするようになったのでしょうか
・挨拶しないと寂しいな
・挨拶は大切だったんだな
・みんな、ごめんね
進んで挨拶をすることの価値について、様々な角度から考えられるように、子どもの発言を価値付けしながら聞きます。
③普段している挨拶のよさについて振り返り、実践への意欲を高める。
自分から進んで挨拶した時は、どんな気持ちになりますか
・嬉しい気持ち。明るくなる
・がんばろうという気持ち。やる気が出る
これからも明るく元気な挨拶をしていこうという気持ちを高めて授業を終えます。
板書例
評価
・ 挨拶は、みんなが気持ちよく生活するために大切であることを理解できたか。
・自分から進んで挨拶しようとする意欲を高めることができたか。
イラスト/小泉直子 横井智美
『教育技術 小一小二』2020年2月号より