さる先生が提案!ウィズコロナに紙と鉛筆で立ち向かう際の最適解とは?

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坂本良晶の「学校ゲームチェンジ論」
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新型コロナ対策:新しい授業と学級づくりの知恵、続々更新中!
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元京都府公立小学校教諭、Canvaエデュケーション アジア太平洋地域マーケティング統括マネージャー

坂本良晶

まだまだ収束の見えない新型コロナウィルスの感染拡大。オンラインでの授業がままならない学校ができることについて、Twitterで17000人以上のフォロワーをもつ「さる先生」こと坂本良晶教諭に教えていただきました。

執筆/京都府公立小学校教諭・坂本良晶

「ウィズコロナ」の学校の在り方の展望
写真AC

今後の学習の在り方とは

新型コロナウイルスによる影響で、学校現場は大混乱ですね。1日も早い収束を祈るばかりです。

ひとまず、5月6日の非常事態宣言終了から学校再開されるとなっていますが、正直、どうなるか全く分かりません。ニューヨークのロックダウン(都市封鎖)延長が発表されるなど、地球レベルにおいて、少し先の見通しさえも持てない現状です。

少なくとも、5月6日以降になっても、ビフォアコロナの頃の学校活動をすることは不可能でしょう。そう、「アフターコロナ」はすぐにはやってこないのです。

一部自治体ではオンライン授業等、ICTを活用した家庭学習へと舵を切っているようです。

しかし、多くの自治体においてそういったシステムは未整備のまま。宿題プリントの束を配付するのが関の山といった学校が、大多数を占めるのではないでしょうか。

先日、文科省がGIGAスクール構想の前倒しや、BYOD(Bring Your Own Device/私的に所有しているPC、スマホ、タブレットを職場での業務に活用すること)でのオンライン家庭学習について通知しました。

皮肉にも、コロナの影響により、各国から周回遅れだった日本のオンライン学習が、一気に進みそうな雰囲気となってきたのです。

これからは、ウィズコロナとして、教室というハコの制約を解き放った学習の在り方へと、ダイナミックにシフトしていくことでしょう。

課題を作業と苦行にしないために

とはいえ、BYODによる家庭学習が稼働しだすまでは、「タブレットとタッチペン」ではなく、「紙と鉛筆」という太古から続く方法で、家庭学習を成立させる必要があります。

現状では多くの学校において、全ての子供たちに同じ枚数・同じ内容の宿題プリントを配付して、課題としているのではないでしょうか。

一律の課題は、得意な子にとっては作業、苦手な子にとっては苦行となり、効果的な学習成果が期待できるのは、中間層の子供に限られてしまいます。

緊急事態だとはいえ、学びの個別最適化が叫ばれる今日において、これはあまり好ましい在り方ではないと感じます。

そこで、限られた時間と手段の中で、学校は一体何ができるかについて考えましょう。「学校で使える時間が以前の数十倍少なくなった」ことを前提に、仮に週に1時間といった限られた登校日となった場合、そこで何ができるかを考えなくてはなりません。

学校は成果を確認する場と位置付ける

学校を、漢字や計算といった基礎基本の成果を確認する場と位置付けることで、家庭での学習に連動性や必然性を帯びさせることができると考えています。

漢字学習

例えば、次回の登校日に漢字ドリルのユニット1のテストを実施することを、子供たちに告知しておきます。

そうすることで、子供たちの中で「次の登校日の漢字テストで満点を取る」という家庭学習の目標が必然的に設定されます。

「その目標達成のために家庭で漢字の学習をする」という流れです。

学校では、新出漢字を家庭で学習するためのポイントについて簡単に確認するにとどめ、あとはそれぞれの子供のやり方で学ばせます。(ただし、それまでに学び方を全く学んでいない子供たちの場合なら、一定の学習サイクルの回し方を指導する必要はあります)。

自分でテストをしてみて、自分で丸つけをして間違えた箇所をふりかえった上で、練習するというサイクルです。

その際、葛原祥太先生が提唱する「けテぶれ学習法」が大いに参考になると思います。

※「けテぶれ学習法」… 葛原祥太先生が提唱・実践する 「計画、テスト、分析、練習」という4過程を繰り返す学習法。

また、基礎が既に定着している子供の場合は、新出漢字を使った熟語集等に取り組ませるといった、発展的な学び方を伝えることも必要でしょう。

計算問題

漢字学習と同じく、計算問題でも同様のサイクルを回すことが可能だと考えます。

最もシンプルな方法は、百マス計算のプリント(低学年の場合は横10マス×複数段)をたくさん刷っておき、毎日家庭で取り組んでタイムを計測することです。もちろん、間違った箇所もしっかりとふりかえりをします。

タイムと間違った箇所を毎日記録することで、自身の成長が可視化されるため、短調になりがちな家庭学習のモチベーションの持続にも繋がると思います。

そして学校では、同じ計算プリントでテストをします。家庭で何度も練習をし、学校で試合をするような感覚でしょうか。

いずれにせよ、「学校は練習の成果を確認する場という意識の下で家庭学習をするという仕組みづくり」をすることが大切だと思います。

なお、啓林館等、今回の算数の教科書にはQRコードを読み取ることで、計算の仕方を動画で説明してくれるといったシステムが導入されているので、家庭で活用できるよう助言してあげるのも一つの手ですね。

教師も勉強をするべき時

休校中の教師たちが今すべき最も大切なことは何でしょうか。
シンプルな答えですが、それは勉強だと僕は思います。

今、世界がとてつもないスピードで変化しています。日米共に株価は乱高下。原油価格は21年ぶりの安値を記録しました。またオーストラリアの第2位の航空会社の経営破綻というニュースも飛び込んできました。

これから連鎖的に多くの問題が生まれてくることは想像に難くありません。世界がひっちゃかめっちゃかになってしまっている状態で、生きた心地のしないような日々を送っている方々もたくさんいます。

そんな中、僕たち公務員は世界の経済状況の影響をほとんど受けず、給料をもらうことができます。しかし、民間(特に資金的体力がない企業)の場合はそうではありません。僕自身、以前のリーマンショックの時には民間企業で働いており、それこそ会社が倒産するのではないかという恐怖に襲われました。

時間的余裕が生まれる今だからこそ、世界の経済や政治について学ぶことで、教育者としての視座を高めることができます。それと同時に、民間の痛みを理解することも必要です。

教材研究等でこういったまとまった時間が取れることは極めて異例です。みんなが苦しいこの時期に我々教員が積極的に学ぶことで、いずれそれは子どもへと還ります。何かと目の前のことに一喜一憂しがちですが、教育というマクロな視点から国を支えていくんだという意識を持ち、どーんと構えることが、今必要なのかもしれません。

ウィズコロナ社会における教育の担い手として重大な局面を迎えています。世界の教育の在り方の潮流、接触を避けるための脱オフライン化、GIGAスクール構想における2000億円超の予算。学校が再開されると、それらの必要性・必然性に駆られ多くのことが加速度的にアップデートされていくことが予想されます。ジェットコースターに掴まるような気持ちで、これからの変化についていかなくてはなりません。

坂本良晶先生

1983年生まれ。京都府公立小学校教諭。前職では大手回転寿司チェーン「くら寿司」で店長として全国売り上げ1位を記録するという異色の経歴をもつ教師。「教育の生産性を上げ、子どもも教師もハッピーに。」を合い言葉に日々発信するTwitter「さる@小学校教師」のフォロワーは17000人以上。著書に『全部やろうはバカやろう』(学陽書房)、『MISSION DRIVEN』(主婦と生活社)などがある。

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