メーカーに聞く「学習者用デジタル教科書」製品レポート #2|日本文教出版

1人1台端末が整備され、国の施策によって配布されている学習者用デジタル教科書。2024年4月から小学校の教科書が新版となるに伴い、デジタル教科書も改訂されます。
そこで各社のそれぞれのデジタル教科書には、どんな特徴があるのか。自社製品のよさと特徴、今後の展望などをメーカーの開発担当者に聞きました。今回は日本文教出版さんです。(取材・文/村岡明)

今回の取材先

日本文教出版株式会社ICT事業部
鴻巣 純一氏

鴻巣 純一氏

ご注意:本記事中におけるデジタル教科書の記述は、2024年2月現在開発中のため、内容や画面は変更になる場合があります。

同社の発行する教科書について(令和6年度小学校)

  • 小学校:社会・算数・図画工作・道徳
  • プラットフォーム:みらいスクールプラットフォーム

指導者用デジタル教科書の特徴

当社のデジタル教科書は、指導者用も学習者用も「みらいスクールプラットフォーム」というプラットフォームを利用しています。操作方法が共通しているので、先生方が迷うことはありません。また授業を進めやすいよう様々な工夫をしています。例えば社会では1開き(原則1時間)の学習の流れをつかみやすいように、1時間を3~4分節に区切り、1分節ごとに活用する資料と本文を表示することができます。

指導者用デジタル教科書の提供方法は、教科によって異なります。図工と道徳は教師用指導書に同梱されており、社会と算数は別売です。いずれも、クラウド環境でお使いいただくことが前提となっています。

学習者用デジタル教科書の特徴

当社独自の特徴は以下の3点です。

  • デジタルノート
  • 紙面切り取りツール
  • シンキングツール

デジタルノートは、ペンで書き込んだり、ふせんを貼ったり自由に書き込めるノートです。多様なテンプレート(グラフ用紙、方眼紙など)があり、学習の記録や振り返りに活用できます。

紙面切り取りツールは、教科書紙面の一部を切り取るための機能です。切り取った画像は、デジタルノートに貼り付けて学習することを想定しています。

シンキングツールは、思考を深めたり整理したりするツールです。ベン図、Xチャートなど全部で13のツールが収録されています。ふせんを貼り付けて作成し、ファイルとして保存可能です。

デジタルノート(テンプレートの選択画面)
切り取りツール
シンキングツールの選択画面

各教科の特徴

社会科では、教科書に掲載されているグラフが動的に変化することで、より学習内容を理解できるように工夫されています。たとえば食物輸入の説明図の場合、輸入先の国名、輸入量、割合などをタップ(またはクリック)するごとに表示させることが可能です。

社会科食物輸入の説明図

図画工作では、正しく安全に活動していただくため、道具や材料の使い方を説明している動画を収録しました。場合によっては、学習者視点の動画もあります。

スライダーしき カッターナイフの つかいかた(学習者視点の動画)

取材を終えて

図工の教科書で定評のある同社だけあって、図工のデジタル教科書コンテンツが充実しているように感じました。特に技術的な説明の動画には、学習者視点のものがあるので、理解しやすいことでしょう。「やってみたい」という意欲に繋がるかもしれません。
一方でデジタルノートは、教科書との連携がいま一つであるように感じました。一般のノートアプリよりも便利、という部分の必要性を感じます。
また、社会科の教科書を使っている先生からは、教科書内容をなぞっただけの動画が多いとの指摘がありました。教科書の文章とほぼ同じ内容を、本人が語っているような動画では、子供たちが積極的に見たがらないと言います。このあたりは新版の教科書で改善されている部分かもしれません。
今後の展開に期待したいところです。

取材・文/村岡明
国語教科書編集者を経て「ジャストスマイル」など教育ソフトを多数企画する。その後教職員向けのネットマガジンを創刊。ソフトウエア開発、Webサービスの開発を20年以上経験している。

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