小3 国語科「短歌を楽しもう」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小3国語科 「短歌を楽しもう」(光村図書)の全時間の板書、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/東京都西東京市立田無小学校校長・前田 元
執筆/東京都渋谷区立富谷小学校・佐藤綾花
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
この単元では、日常の話し言葉とは異なる文語調の短歌を音読したり暗唱したりして、五・七調のリズムや文語の響きに親しむことを目指します。
教科書には秋の情景を歌った短歌が4首示されています。どの歌も秋の風景や季節の感じ方が豊かに表現されていて、児童も風景を想像したり、歌人の思いに共感したりすることができるでしょう。
本単元では意味を理解することが主な目標ではないので、口語訳と照らし合わせながら大まかに理解できるようにします。声に出して読んでみて「言葉の響きがいいな」と感じた歌や、「季節の感じ方が共感できるな」と思った歌など、お気に入りの歌を見つけ、響きやリズムを体感しながら何度も音読したり暗唱したりすることができるようにします。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
気に入った短歌を選び、音読したり暗唱したりするという言語活動を設定します。
お気に入りの短歌を見つけて暗唱できるまで音読したり、教科書以外の短歌を調べ、たくさんの短歌を音読したりしてもよいでしょう。音読を友達と聞き合ったり、気に入った短歌が同じだった友達と一緒に読んだりして、楽しみながら音読できるようにします。
本単元は1時間で設定されています。本単元の学習で短歌の言葉の響きやリズムに親しんだ経験をきっかけにして、他の短歌を調べて音読したり、暗唱したものを朝の会や帰りの会などで披露したりする学習活動に展開していくことで、伝統的な言語文化への関心をさらに高めることができます。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 言葉の響き・リズム・歌の意味などの観点を確かめ、お気に入りの短歌を見つけられるようにする
日常生活では使わない言葉にたくさん触れることで、「難しそう」と苦手意識をもってしまう児童もいることが予想されます。そのように苦手意識をもたないためには、言葉の意味ではなく響きやリズムに注目させることが大切です。
導入で、4首の短歌の中から「特にこの言葉の響きが面白い」と感じたところ、「この部分はなぜか読んでいて心地よい」と感じたところはどこか尋ねます。
「上手く言えないけれど、なんとなく好き、心地よい」と感じるところを共有することで、言葉の響きやリズムに注目して短歌を読めるようにしていきます。
他にも口語訳と照らし合わせて読み、「この気持ちは分かる」「この季節の感じ方がいいな」と、共感できるという理由からお気に入りの短歌を見つけることも考えられます。言葉の響き・リズム・歌の意味などの観点を全体で確かめることで、お気に入りの短歌を見つけやすくなるようにします。
〈対話的な学び〉 一緒に読んだり、お互いの音読や暗唱を聞き合ったりする
お気に入りの短歌を友達と声を揃えて読む活動を行います。このことで、言葉の響きやリズムを一層意識することができると考えます。お互いの言葉の響きやリズムがぴったり合ってくることを楽しみながら音読するとよいでしょう。
また、暗唱することができたら児童は友達に聞いてもらいたいと思うでしょう。
1時間の終わりの方にお互いの音読や暗唱を披露する時間を設定し、達成感を味わうことができるようにします。短歌を読むだけでなく、どの部分が特に気に入ったのか、簡単に理由も話すようにすることで、言葉の響きやリズムに一層注目できるようにします。
〈深い学び〉 定期的に短歌の音読や暗唱を聞き合う場を設定する
本単元の学習をきっかけに、児童は文語調の短歌や短歌を音読することに対する関心を高めることができるでしょう。しかし、時間が経つとその関心は薄れていきます。自分が「いいな」と思った短歌や暗唱した短歌を伝え合う場があることで、文語調の短歌や短歌を音読することに対する関心が続いていくと考えます。クラスの実態に応じて、朝や帰りの会でお気に入りの短歌の音読を聞き合う場を設定するとよいでしょう。
他にも、児童が音読を楽しめそうな短歌や、地域に因んだ短歌を教室に掲示しておくことで、興味をもった児童が音読するような教室環境をつくることも考えられます。形式にとらわれず、児童が気軽に音読できる場を設定することが大切です。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
(1)二次元コードから朗読音声を聞き、音読の仕方を確かめる
教科書に示されている二次元コードを端末で読み取り、自分が確かめたいタイミングで音読の仕方を確かめます。普段使っている話し言葉とは違う文語は、どのようにアクセントを付けて読むのか分かりにくいものもあります。一人一人お気に入りの短歌が決まったら、自分の端末から朗読音声を聞きながら繰り返し音読する時間を設定します。可能であればイヤフォンを接続し、集中して聞けるようにするとよいでしょう。
(2)インターネットを使って他の短歌に触れる
教科書会社の「関連リンク」から、教科書に示されている歌に関する資料を見ることができます。特に猿丸太夫(contest.japias.jp/tqj2003/60413/page5.html)と安倍仲麿(contest.japias.jp/tqj2003/60413/page7.html)に関連したサイトからは、小倉百人一首の他の歌を知ることができます。たくさんの短歌を音読してみて、その中からリズムや響きが気に入ったものを決めるのもよいでしょう。本単元は歌の意味や作者について詳しく知ることが目標ではないので、調べ学習にならないようにします。
6. 単元の展開(1時間扱い)
単元名: 短歌を楽しもう
【主な学習活動】
第一次(1時)
〇 短歌について知る
・「俳句を楽しもう」の学習を振り返り、俳句は五・七・五のリズムで読まれていることや、自然の様子やそこから感じられることが表されていることを確かめる。
・俳句と短歌を比べながら、短歌も俳句と同じリズムで読まれていることや、短歌は31音で作られていることを知る。
〇 短歌の範読(または朗読音声)を聞き、学習の見通しをもつ
・「むしのねも…」の短歌の範読と、歌の意味を聞き、真似て音読してみる。
・聞いたり音読したりして感じたことを伝え合う。
・教科書に示された4首の中から、お気に入りの短歌を見つけて暗唱したり、他の短歌を調べて言葉のリズムや響きが気に入った短歌を音読したりするといった学習活動の見通しをもつ。
〇 気に入った短歌を選び、音読したり暗唱したりする
・気に入った短歌を何度も読み、暗唱する。
・気に入った短歌を音読し、友達と聞き合う。選んだ短歌が気に入った理由を伝え合う。
全時間の板書例と指導アイデア
イラスト/横井智美