小1 国語科「はっけんしたよ」全時間の板書&指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小1国語科「はっけんしたよ」(東京書籍)の全時間の板書例、発問、想定される児童の発言、ワークシート例、1人1台端末の活用例等、授業実践例を紹介します。

 小一 国語科 教材名:はっけんしたよ(東京書籍・あたらしいこくご  一下)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/金沢大学人間社会研究域学校教育系教授・折川 司
執筆/愛知県西尾市立佐久島しおさい学校・宮川 周

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、子供たちが校庭などの身近なところで見られる動植物の様子を観察し、気付いたことを伝える文章を書く学習を通して、身近な動植物の様子を伝えるために必要な事柄を集めたり確かめたりして、伝えたいことを明確にした文章を書く力を身に付けられるようにします。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

(1)読み手と目的を明確にした言語活動の設定

本単元では、子供たちが校庭など身の回りの動植物の様子を観察して気付いたことを、絵や写真とあわせて文章に書き表していきます。そして、学級の友達が書いたものとともに拡大した校舎配置図上に貼り付け、「はっけんマップ」としてまとめていくという言語活動を設定します。

これまでに平仮名や片仮名を習得し、「こんなこと したよ」や「えにっきを かこう」など、同じ系統の単元において、身近な出来事などを簡単な文章に書く学習をしてきた子供たちは、文字を書くことへの喜びや自分の思いを文や文章に書いて表現することの楽しさを感じているのではないでしょうか。

これまでの学習経験を踏まえ、本単元では、異学年児童や保護者・地域の方といった読み手や、身の回りの動植物の様子を観察して気付いたことを伝えるという目的を明確にした言語活動を設定します。
こうすることで、子供たちが自分の気付いたことや思ったことを読み手に伝えたいという思いを高められるようにします。さらには、伝えたいことが読み手に伝わったという喜びや達成感を得た子供たちが、今後の「書くこと」の学習により一層、意欲的に取り組めるようにします。

(2)子供たちが安心して学習に取り組めるようにするための場の設定

1年生という入門期の子供たちにとって、学習の見通しをもち、学習の方法を理解したうえで安心して学習に取り組めるようにすることはとても大切です。
そこで、単元の導入では全員で学習の計画を立てる場を設定し、子供たちがこれからの学習の見通しをもてるようにします。その際、教科書の例や教師のモデルを使いながら、「はっけんメモ」やそれを基に書かれた様子を伝える文章、「はっけんマップ」がそれぞれどのようなものか、具体的にイメージすることができるようにします。
また、全員で同じ動植物の様子を観察し、観察の観点や言葉による記録の仕方を考える学習を通して、その後の個やペアでの学習活動にいかせるようにします。

単元を展開する中でも教科書の例や教師のモデルを使いながら、「はっけんメモ」には諸感覚(視覚・触覚・聴覚・嗅覚・味覚)を使って気付いたことを短く、簡潔に書くとよいこと、「はっけんメモ」に書いた事柄を基に、文末を工夫したり、必要に応じて事柄をまとめたりして文章を組み立てることで、様子を伝える文章が書けることなどを全員で理解を図り、一緒に練習する場を設定します。
こうすることで、一人一人の子供たちが学習の方法を理解し、自分にもできそうだという見通しをもって、安心して学習に取り組めるようにします。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 読み手を明確にし、相手意識をもてるようにする

「書くこと」における学習では、読み手を明確にすることが大切です。読み手が明確になることで、子供たちが文章を書いて伝える相手を具体的に想像し、相手意識をもって学習に取り組めるようになります。また、「書くこと」に対する意欲の高まりにもつながります。

低学年段階から少しずつ相手意識を高めていくことが、中学年以降の相手や目的を意識した「書くこと」の学習にも生かされます。
そこで、本単元では、学習計画を立てる際に子供たちと話し合いながら、気付いたことを伝える相手を異学年児童や保護者・地域の方と設定します。このような幅広い読み手に伝えられるように、「はっけんメモ」やそれを基に書いた様子を伝える文章を拡大した校舎配置図上に貼り合わせ、「はっけんマップ」としてまとめて校内に掲示をします。

これまで、担任の先生や学級の友達などを主な読み手として「書くこと」の学習に取り組んできた子供たちにとって、より多くの人に伝えたいことを伝えられる場を設定することは、子供たちの「書くこと」に対する意欲を一層高めることにつながるでしょう。
また、読み手が明確になったことで、「はっけんメモ」や様子を伝える文章を丁寧に読みやすく書きたい、読む人に分かりやすく書いて伝えたいという思いの高まりも期待できます。このような思いが、子供たちの学びを支え、自分が伝えたいことが読み手に伝わるように、粘り強く必要な事柄を集めたり確かめたりして、観察したことを記録し、伝える文章を書こうとする主体的な姿につながります。

〈対話的な学び〉 ペアで関わり合いながら「はっけんメモ」を作る

本単元では、主に、①校庭で身近な動植物の様子を観察する場面、②観察したことの中から、伝えたいことを明確にする場面で二人一組を基本としたペア活動を取り入れます。
①の観察場面において、ペアで共通の体験をすることで、②の伝えたいことを明確にする場面で、対話を通して互いに気付いたことを確かめたり、新たな気付きを得たりすることができます。

また、対話の中で友達が使っていた語彙や表現の中から、自分が伝えたいことによりぴったりだと感じたものを使うことで、語彙を広げたり、表現力を豊かにしたりすることにもつなげられるでしょう。
このような、意図的なペアでの関わり合いを通して、対話的な学びを引き出すことができます。

〈深い学び〉 上学年(2年生)児童からの感想や助言をもとに、文章を推敲する

「はっけんメモ」を基に様子を伝える文章が書けたところで、実際の読み手でもある上学年(2年生)児童に読んでもらい、感想や助言をもらう機会を設定します。
様子を伝える文章を書く際に、子供たちが実際の読み手である上学年児童に読んでもらうという意識をもてるようにすることで、子供たちはこれまでの「書くこと」における学びで習得した力を十分に発揮しようという姿勢で学習に取り組めます。

また、「書くこと」の学習の経験を積んでいる上学年児童からの肯定的な感想は、子供たちの学びに対する自信を高めるでしょう。
さらには、より読み手に分かりやすい文章にするための具体的な助言は、推敲という活動を通して、子供たちの「書くこと」における技能や表現力を育むことにつながります。このような学習活動を通して、子供たちの学びはより深いものへとなっていきます。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

本単元では、「伝えたい動植物を見つける場面」と「観察して気付いたことを『はっけんメモ』に書く場面」で、1人1台端末の活用を位置付けています。ここでは、カメラ機能や「ピクチャーキッズ」、「SKYMENU Cloud」の活用を想定し、指導の際のポイントを説明します。
ただし、いずれの場面においても1人1台端末を使用しなくても学習を進められます。1年生という発達段階や目の前の子供たちの実態に応じて、端末を使うこと自体が目的とならないように気を付けて活用しましょう。

(1)伝えたい動植物を見つける場面での活用

「はっけんメモ」には、伝えたい動植物の様子が読み手に分かりやすくなるように、動植物の写真を載せるスペースを設けます。
そこで、子供たちは端末のカメラ機能を活用し、伝えたい動植物の様子がよく分かるような写真を撮ります。そして、「ピクチャーキッズ」を活用し、撮った写真を取り込み、観察記録用のワークシートを作ります。「ピクチャーキッズ」には、複数の形式の観察記録用ワークシートが用意されており、それぞれの子供たちが端末で撮った写真を取り込んだワークシートを容易に作ることができます。本単元の第二次(4時)において、実践することができます。

端末のカメラ機能を活用して写真を撮ることのよさは、子供たちが見つけた複数の動植物の中から、最終的に何を伝えたいのか決めるまで、情報を保存することができることです。
また、「はっけんメモ」を書くときに、何度も写真を見返しながら書けるというよさもあります。
一方で、写真の代わりに子供たちが動植物の様子を絵で表現することももちろんできます。絵で表現することのよさは、子供たちから対象となる動植物の様子をよく観察するという行為を引き出せることです。こうすることで、伝えたいことがよりはっきりとし、「はっけんメモ」の内容が充実します。
それぞれのよさを確かめたうえで、子供たちの実態や時間的な余裕などに応じて、端末を活用してみるとよいでしょう。

(2)「はっけんメモ」に書きたいことや伝えたいことを明確にする場面での活用

ペアでの観察後、「はっけんメモ」に気付いたことを書く学習に入ります。
この前段階として、ペアで気付いたことを確かめ、「はっけんメモ」や様子を伝える文章に書きたいことや、読み手に伝えたいことを明確にして、整理するペア活動を取り入れます。その際に、「SKYMENU Cloud」の「発表ノート」を活用することができます。

まず、「発表ノート」の「グループワーク機能」を活用し、ペアの友達と画面を共有します。
続いて、教師が端末上で配ったノートに、伝えたい動植物の写真を貼り付けます。
そして、気付いたことを確かめる際には、教師が「資料置き場」に用意しておいた諸感覚や気持ちを表すマーク(目・手・耳・鼻・口やハート)や矢印のマークを使い、動植物のどこに着目してどのように感じたのか、視覚的に示しながら対話をすることができるようにします。
こうすることで、観点をもとに気付いたことを伝え合いながら整理したり、その中から「はっけんメモ」や様子を伝える文章に書いて伝えたいことを選び、明確にしたりすることができます。本単元の第二次(4時)において、実践することができます。

この場面における学習も、もちろん端末を使うことなく取り組めます。
子供たちが描いた動植物の絵や、撮影した写真をプリントアウトしたものに、観点ごとに色分けした付箋紙を使って気付いたことを簡潔に書きこみながらペアで対話をすることで、「はっけんメモ」や様子を伝える文章に書いて伝えたいことを確かめ、明確にすることができます。
(1)同様、子供たちの実態に応じて端末を活用されることをおすすめします。

6. 単元の展開(8時間扱い)

 単元名:「はっけんしたよ」~生きもののようすがつたわる文しょうをかこう~

【主な学習活動】
・第一次(1時2時
①② 身の回りの動植物を観察して気付いたことを伝える文章を書くための学習計画を立てる。また、「はっけんメモ」を書くときに大切なことを考える。

・第二次(3時4時5時6時7時
③④ 身の回りの動植物を観察し、気付いたことを「はっけんメモ」に整理してまとめる。
⑤⑥「はっけんメモ」を基にして、動植物の様子を伝える文章を書く。
⑦ 上学年(2年生)児童に様子を伝える文章を読んでもらい、感想や助言を基に文章を推敲する。

・第三次(8時
⑧ 様子を伝える文章を仕上げて「はっけんマップ」にまとめ、学習を振り返る。

全時間のワークシート例・板書例・端末活用例

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例

※本単元の最後には、「はっけんメモ」の下段に様子を伝える文章を書いたワークシートを重ね、めくることができるように貼り付けます。
そして、それを拡大した校舎配置図に貼り合わせて「はっけんマップ」としてまとめます。
子供たちが完成した状態のものをイメージしやすくするために、【資料A】の点線部分に【資料B】を操作して移動し、重ね合わせるなどしてもよいでしょう(上の板書例参照)。

【1時間目のワークシート例 】

1時間目のワークシート例
「主体的な学び」のために

第一次(1時)では、子供たちが本単元の学習に見通しをもち、安心して意欲的に学習に取り組めるようにすることを大切にし、学習計画を立てていきます。
そこで、まずはどの子供たちも学習に参加することができるように、最近の学校生活や生活科などの学習において見つけた動植物について尋ねます。事前に生活科の「秋見つけ」などの学習をすることで、より子供たちは見つけた動植物を答えやすくなるでしょう。
また、友達の発言を聞き、見たことがないから探してみたい、もっといろいろな動植物がいるのではないかなどと、身の回りの動植物への興味や関心の高まりも期待できます。

続いて、子供たちがこれからの学習に見通しをもてるように、教科書(下)39ページの「はっけんメモ」を拡大したものを提示します。単に提示するのではなく、例えば、「はっけんメモ」の絵を隠し、「きづいた こと」の欄に書かれた事柄をヒントのように一つずつ子供たちに伝え、クイズのようにして提示してみてもよいでしょう。
子供たちは楽しみながら活動に取り組む中で、「きづいた こと」の欄には、題材とした動植物の様子が分かる事柄を書く必要があることなど、実感を伴いながら理解することができるでしょう。

最後に、教科書(下)40・41ページの「ようすを つたえる 文しょう」の拡大したものを提示します。身の回りの動植物の様子を観察して気付いたことを、文章と絵や写真を使ってまとめるという今後の学習の流れを、教科書の資料を活用しながら示すことで、子供たちがこれからの学習への見通しをもち、安心して意欲的に学べるようにします。

【「はっけんメモ」を提示する場面】

(「はっけんメモ」の上段を指しながら)ここに描かれている生き物は何でしょう。

何だろう。ヒントをください。

じゃあ、ヒント1。「からだは、みどりいろ」です。

カエルかな。

カマキリだと思うよ。

なるほどね。ヒント2。「うしろのあしは、ながくてまがっている」そうです。

やっぱり、カエルだよ。

バッタかもしれないよ。

ああ、そうか。では、ヒント3。「さわるとすこしかたい」です。

えっ、じゃあ、カエルではないのか。

バッタだ。

いやいや、カマキリかもしれないよ。

いよいよ、最後のヒント。ヒント4。「とぶときにチキチキという音がする」そうです。

え?

分かった、バッタだよ。聞いたことがあるよ。

答えは、「(ショウリョウ)バッタ」でした。

やったあ。

チキチキっていう音がするんだね。知らなかったなあ。

【「きづいた こと」に書く内容を考える場面】

例えば、「見た もの」がカマキリだったら、どんなことを書くといいと思いますか。

大きなカマがあることを書くといいと思います。

緑色の大きな目があることも書くといいと思います。

なるほど。これから、いろいろな生き物をみんなが見つけたときに、「きづいた こと」のところには、どのようなことを書くとよいのかな。

見つけた生き物の色とか音とか、分かったことを書くといいと思います。

見つけた生き物が何の生き物か、はっきりと分かることを書くといいと思います。


【2時間目の板書例 】

イラスト/横井智美

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

授業改善の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました