【教科調査官に聞く】国語科の新学習指導要領-改訂ポイントと授業改善の視点

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小学校学習指導要領の改訂にあたり、国語科における授業改善の重要な点を、文部科学省・菊池英慈教科調査官にうかがいました。

菊池先生写真

菊池英慈(きくちえいじ):文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官、国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部、教育課程調査官・学力調査官。茨城大学教育学部卒業。茨城県公立小学校教諭、茨城大学教育学部附属小学校教諭、同附属中学校教諭、茨城県教育研修センター指導主事、茨城県公立小学校教頭、大子町教育委員会事務局指導主事を経て、平成29年4月より現職。

「言葉」に着目し、語句や語彙を豊かにする

国語科は、特に「言葉」に着目をする必要があります。「言葉」がもつ働きや役割に改めて気付くことで子供は言葉を自覚的に用いるようになるのです。「言葉」に着目するとともに、語彙を豊かにすることも見逃せません。

各学年とも、語句の量を増やすことと、語句のまとまりや関係、構成や変化について理解することが目標となっています。これは、子供たちが作文を書くとき、例えば、「○○は楽しかったです」という「楽しかった」という表現だけでなく、「感動した」や「胸に染み入った」といった様々な言葉の中から自分の思いを表現できる言葉を選んで文章を書くことができる力が必要な時代になっているためです。第1学年では、特に身近なことを表す語句の量を増やしていくことが重要です。

「バナナ」「ミカン」「リンゴ」というまとまりが「くだもの」という語彙になるということで語句を増やしたり、「手をさわる」「手をにぎる」「手をふる」など、動きを表す言葉は数多くあるといったことで、語句を増やしたりすることができます。

読み聞かせや読書などで、「言葉」に着目させる

語句や語彙は、知識として聞いたことがあるというのではなく、確実に活用できるところまで力を付けたいものです。そのため、言葉に着目させる様々な場面を設定することが大事です。

それは、読み聞かせだったり、読書指導だったり、また、音読や朗読などの教材での実践、取り立ての指導など多岐な場面が考えられます。

さらに、第3学年及び第4学年では、様子や行動、気持ちや性格を表す語句の量を増やし、第5学年及び第6学年では思考に関わる語句の量を増やしていくことが重要です。これらの語句を学習の中で使うことを通して、日常生活の中でも使いこなせる語句を増やしていくことが重要です。

新指導要領に「言葉遊びを通して、言葉の豊かさに気付くこと」が加わる

国語科では、我が国の言語文化について理解したり、技能を身に付けたりする事項も目標に入っています。

我が国の言語文化とは、我が国の歴史の中で創造され、継承されてきた文化的に価値をもつ言語そのもの、またそれらを実際の生活で使用することによって形成されてきた文化的な言語生活など、幅広いものです。

伝統的な言語文化に関する新しい内容として、第1学年及び第2学年に「イ 長く親しまれている言葉遊びを通して、言葉の豊かさに気付くこと。」を加えました。

言葉遊びというのは、いろはうたや郷土かるたなど、昔から親しまれてきたもので、言葉のリズムを楽しめるでしょう。この言葉遊びが、第3学年及び第4学年ではことわざや慣用句、故事成語、さらに第5学年及び第6学年では古典につながっていくのです。

「情報の扱い方に関する事項」を新設

急速に情報化が進展する社会において、様々な媒体の中から必要な情報を取り出したり、発信したい情報を様々な手段で表現したりすることが求められています。このような背景の中、国語科において、「情報の扱い方に関する事項」を新設しました。

話や文章に含まれている情報を取り出して整理したり、その関係を捉えたりすること、また、自分のもつ情報を整理して、その関係を分かりやすく明確にすることといった情報の扱い方に関する「知識及び技能」は、国語科において育成すべき重要な資質・能力の一つです。

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新学習指導要領と解説の理解と、教材の具体化を

移行期に、まずしていただきたいことは、学習指導要領の総則と各教科、解説をじっくりと読んで理解することです。丁寧に読み進めると、指導事項がいかに大事なのかが分かると思います。 そして、その指導事項が教材にどのように反映しているのかも理解し、指導事項を教材で教えるために具体化しておくことも必要です。そして、目の前の子供の実態をよく把握し、日々の授業改善に取り組んでいただきたいと思います。

取材・文・撮影/浅原孝子

『教育技術 小五小六』2019年9月号より

*この記事は、教育技術MOOK『何が変わるの? 教科等の要点が簡潔にわかる! 新学習指導要領 ここがポイント』からの転載です。

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編/小学館「教育技術」
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