小3算数「わり算や分数(大きい数のわり算、分数とわり算)」指導アイデア《もとの大きさが異なるものを等分した数》

執筆/神奈川県横浜市立つつじが丘小学校教諭・山田薫
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一、島根県立大学教授・齊藤一弥

目次
単元の展開
第1時 簡単な場合の何十÷1位数の計算のしかたについて、既習の除法計算のしかたや数の構成を基に考え、説明する。
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第2時 簡単な場合の2位数÷1位数の計算のしかたについて、既習の除法計算や乗法計算のしかた、数の構成を基に考え、説明する。
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第3時 分数で表された数を、等分することや分数の意味に着目して、除法の計算を用いて求める。
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第4時(本時)もとの大きさが異なるものの等分した数について、もとの大きさに着目して説明する。
本時のねらい
もとの大きさが異なるものの等分した数について、図や式を使って説明することができる。
評価規準
もとの大きさに着目して、[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]の長さが異なる理由を考え、説明している。
本時の展開
[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]の長さをつくろう。
ここに2本のテープ(青色のテープ84㎝、黄色のテープ88㎝)があります。[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]の長さにしてみましょう。
※テープを実際に折ったり、長さを測って切ったりして、[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]の長さのテープをつくる。
できました。テープを2回折ったら、[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]の長さになります。
半分の半分にしたら、同じ長さで4つに分けられるから、それの1つ分です。
[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]だから、4つに分ければいいです。
同じところはどこですか。
[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]にしたところです。
違うところはどこですか。
青いテープと黄色のテープの長さが違います。
[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]にした後の長さが違います。
2本のテープを[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]の長さにしたら、それぞれ何㎝になりますか。
前の時間にやりました。[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]ということは、4で割ることと一緒です。
84÷4=21。青いテープは21㎝です。
黄色のテープも同じように、88÷4=22㎝です。
84㎝を4等分したうちの1つ分が21㎝ということです。
88㎝を4等分したうちの1つ分が22㎝です。
なぜ、同じく[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]にしたのに、長さが違うのでしょうか。
もとの大きさが異なる2本のテープの[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]の長さが異なる理由を考え、説明することができる。
見通し
もとの長さに注目してみよう。(方法の見通し)
図を使って説明すれば、みんなに伝わりそう。(方法の見通し)
もとの長さが84㎝と88㎝だから、それを[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]にするから……。(結果の見通し)
自力解決の様子
A つまずいている子
どこに着目したらよいか分からず、困っている。
B 素朴に解いている子
式の割られる数に着目し、その数を比較して、考えている。
C ねらい通り解いている子
もとの長さがどこに当たるのか、図と式を結び付けながら考えている。
学び合いの計画
簡単な分数について、第2学年までに、[MATH]\(\frac{1}{○}\)[/MATH]は、もとの大きさを〇等分した大きさの1つ分という意味であることを学習しています。また、[MATH]\(\frac{1}{○}\)[/MATH]の大きさからもとの大きさを見ると、○倍の大きさになっているという見方ができるようになっています。
第3学年では、ものを等分割してできた分数(分割分数)のほかに、測定の際に生じたはしたの大きさを表す場合に用いる分数(量分数)についても学習していきます。
この量分数の学習では、2mを3等分したうちの2つ分と、[MATH]\(\frac{2}{3}\)[/MATH]mの大きさの違いを、子供が説明するという学習場面を多く見かけます。この学習でつまずくポイントが、「もとの大きさ」に着目したことをうまく表現できないことです。分数を考えていく際には、「もとの大きさ」を考えることが大切ということを実感させていきましょう。
そのために、「もとの大きさ」が異なる2つのテープを提示し、同じく[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]にする場面を設定します。同じく[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]にしたのに、なぜ大きさが異なるのかを問うことで、もとの大きさに着目して説明する文脈を位置付けます。
図や説明の言葉を用いて考察する場面では、言葉が図のどの部分を表しているのか、各場面におけるもとの大きさは何なのかを何度も子供と話し合いながら、分数で表された場面の解釈をていねいに扱っていきます。
そして、問題場面における分数の意味についての理解を深めることで、次に学習する量分数と分割分数の比較の場面でも、「もとの大きさ」に着目すればよいという見方ができる子供にしていきましょう。
ノート例
A つまずいている子
C ねらい通りに解いている子
全体発表とそれぞれの考えの関連付け
C1
全体の長さが84㎝と88㎝で違うから、[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]にした長さも違います。
C2
全体の長さというのは、もとの長さのことだから、(テープを重ねて)このように、もとの長さが違うから、それを4等分したら、4等分した1つ分の長さも違います。
C3
図で説明すると、ここからここ(テープの端から端)までの長さがもとの長さで、それの[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]がここからここ(テープの[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]部分)だから、違います。
3人の発表を聞いて、共通している考え方は何ですか。
みんな、もとの長さが違うということを言っています。
青色テープのもとの長さは何㎝ですか。
84㎝です。
図で言うとどの部分?
ここからここ(青色テープの端から端を指す)です。
黄色テープのもとの長さは何㎝ですか。
88㎝です。
図で言うと、ここからここの部分(黄色テープの端から端を指す)です。
つまり、もとの長さは、黄色テープのほうが長いということです。
そうそう。だから、その長さを[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]にするんだから、[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]にした長さも黄色テープのほうが長い。
青色テープは、84㎝を4等分したうちの1つ分で、黄色テープは88㎝を4等分したうちの1つ分ということです。
だから、もとの長さが違うということは、4等分したうちの1つ分の長さも違います。
ということは、なぜ、同じく[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]にしたのに、長さが違ったのですか。
もとの長さが違うからです。
もとの長さが違うと、同じ[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]にしても、その長さも違います。
では、この21㎝のテープのもとの長さは何㎝でしょう。
84㎝の[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]が21㎝だから、21㎝の4倍は84㎝です。
22㎝のテープのほうは、88㎝の[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]が22㎝だから、22㎝の4倍は88㎝です。
この学習をふり返って、どんなことが分かりましたか。
何倍というのと、何分の1というのは、やっぱりつながっています。
何分の1を考えるときは、何を何分の1にしているかを考えることが大事です。
もとの長さを求めたいときは、何分の1にしているのかを考えて、その逆のかけ算で求められます。
[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]以外のときも考えてみたいです。
同じ[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]でも、何を[MATH]\(\frac{1}{4}\)[/MATH]にしているのか、つまり「もとの大きさ」を考えることが大切だと分かりました。分数を考えるときには、「もとの大きさ」は何かに注目していきたいです。
評価問題
①12㎝の[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]は何㎝ですか。
②もとの長さの[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]が20㎝でした。もとの長さは何㎝ですか。
子供に期待する解答の具体例
①もとの長さが12㎝なので、それを3等分したうちの1つ分だから、12÷3=4 答えは4㎝です。
②[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]は、もとの長さを5等分したうちの1つ分という意味だから、その1つ分の長さを5倍すればもとの長さが求められます。
20×5=100 答えは100㎝です。
本時の評価基準を達成した子供の具体の姿
もとの大きさに着目して、[MATH]\(\frac{1}{○}\)[/MATH]の長さについて、図や言葉で友達に説明している。
感想例
「もとの大きさ」に注目すると、同じく[MATH]\(\frac{1}{○}\)[/MATH]にした大きさも違うことが分かりました。逆に、[MATH]\(\frac{1}{○}\)[/MATH]にしているかに注目すると、その逆のかけ算でもとの大きさが求められました。
1人1台端末活用ポイント
今回扱った分数は、○等分したうちの1つ分という、あるものを等分割してできた分数(分割分数)です。
この後、学習が進んでいくと、分子が1以外の数や、もとの大きさが1以外の分数、測定の際に生じたはしたの大きさを表す量分数についても扱っていきます。その際に、「何をもとと見ているのか」を子供自身が見極めていくことが、より一層大切になってきます。
1人1台端末を活用すると、式と図、図と説明の言葉を結び付け、自分が今どこに着目しているのかを可視化したり、より多くの考えに触れたりすることができます。また、考えを交流するなかで、1つの場面でもさまざまな表し方があることに気付いたり、数の範囲を広げて考えていこうとしたりすることも可能になります。
考えを簡潔に表したり、交流したりするツールとして、積極的に活用していきましょう。
イラスト/横井智美
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