シンキングツールを活用して学びを創るには 【タブレットで変わる授業デザイン】#6

関連タグ
タブレットで変わる授業デザイン

1人1台端末でシンキングツール(ロイロノート)を活用し、学びを創る授業を紹介します。今回は小6総合的な学習の時間の防災アプリケーションをデザインするという授業です。

執筆/西尾 環(熊本県公立小学校教諭)

防災アプリケーションをデザイン


6年総合  テーマ「地域の未来を見つめて」単元3提案!アプリケーションデザイン


年間を通した長期的なテーマの中で、小単元の課題の解決に向けて、ゴールを見通して、課題設定の段階から協働的に学びます。防災の視点で、地域の未来に役立つアプリケーションについてアイデアを出し合い、情報を収集・整理し、それまで学んだことを生かしながら課題を追究します。新たな考えを生み出して、論理的に説明し、アイデアを高め合います。専門家からも意見をもとにさらによりよいものを提案し、地域や自分の未来のために考え実行することの大切さを学びます。


①シンキングツールを活用する
課題を設定する段階において、考えを拡散・収束する場でシンキングツールを活用します。また、考えを深めていく課題追究の場でも使います。後半は主に評価の手段とします。
アプリケーションデザインという新しい考えを創造することがメインの学習なので、課題作りの場面がかなり重要です。なぜ、何のためになど目的意識、相手意識を明確にして長期的に意識するためにも、視覚化されたシンキングツールを使って協働で意見交換をするのです。

②Keynoteを活用する
自分たちのアイデアを相手に伝えるための手法として、プレゼンアプリのKeynoteを使います。グループで1台のタブレットにまとめて提案しますが、途中の段階では複数台使用します。

プレゼンテーションをすることが多くなることと、プログラミン的思考を取り入れた造り(リンクなどを使う)にすることから、Keynoteを活用します。デザイン的にも優れており、同じタブレット内でシンキングツールや写真、動画などを共有でき、活用しやすいからです。

③プログラミングを生かす
前単元でプログラミングを学んでおり、それを生かしてアプリケーションデザインを考えるようにします。
プログラミング的思考やプログラミングの教材体験が、これまでにない新しいものを生み出す時に役立ち、開発や提案の大きなヒントにもなるからです。


(1)年間を通したテーマとタブレットの活用
1学期   防災ブックづくり(MetamMoji Note、Classroom)
2学期   プログラミング(ScratchJr、Sphero BOLT)
3学期   本単元

(2)単元指導計画

(3)授業での活用
●展開3~5(3時~5時)
課題を明確にして解決する方法や、アプリケーションを考えます。
⚫︎展開3
災害時の地域の課題について、各チームでアイデアを出し合います。

⚫︎展開4
ツールを切り替えて、チームの視点をもとにして比べ、次に優先順位を付けながら、課題を明確にしていきます。

⚫︎展開5
さらに、ツールを切り替えて、課題を絞り込み、アイデアを考える学習へつなげます。

●展開5(6時~8時)
⚫︎シンキングツールをもとにして構想図を考え、Keynoteでページをつくります。必要に応じてリンクを貼ります。

⚫︎プログラミングで培った知識や技能を活用して、自分たちで選んだ教材でプログラミング的思考を駆使してアプリケーションデザインを作成します。


どのグループも協力して目的意識・相手意識のあるアプリケーションを作成しました。このようなアプリがあればよいと調べていくうちに、自分たちが考えたような仕組みが実際に存在することや、新しい知識との出合いもあり、多くの感動がありました。また、グループでしたことで、得意なことで分担して活動するグループが多く、個人のよさを互いに引き出せました。

学年で協力して行うことで、ブラッシュアップが図られ質の高いものができます。また、専門家のアドバイスを入れることや、パフォーマンス課題と組み合わせることで、課題意識が継続し、満足感も高まります。


現代的な課題に視点を変えて(防災→コロナ感染防止)、協働的な学びを生かし、個人に発展させて取り組んだ学習もできます。

●コロナ感染防止アプリケーションデザインもできます。


西尾 環(にしお・たまき)●熊本県公立小学校教諭。小学校教諭として学校現場一筋。体育主任、研究主任、教務主任などを歴任。熊本大学教育学部情報教育研究会、熊本県市図画工作・美術教育研究会、学級づくり研究会、D-project(デジタル表現研究会)、ArtMile共同壁画プロジェクトなどで長年活動する。ADE2011、ロイロノート認定ティーチャー、シンキングツールアドバイザーなどの資格を持つ。
過去に、「日本子どもの版画指導者賞」「ちゅうでん教育大賞優秀賞」「D-pro booksアワード賞」など受賞。著書に「ゼロから学べる図画工作授業づくり」(明治図書出版)、分担執筆に「楽しい!学級づくり5・6年」(小学館)など多数。


タブレットで変わる授業デザイン カバー

<教育技術MOOK>
タブレットで変わる授業デザイン

GIGAスクール構想で、学校現場も本格的なタブレット活用の時代です。ICTの先進的な熊本市のベテラン教師が執筆。小学1年生から6年生までの、タブレットを活用した様々な授業実践を紹介しています。タブレット1人1台の時代に、すぐに役立つ授業デザインが満載です。

著/西尾 環 
発行/小学館
B5判/80頁
ISBN:9784091126047


構成/浅原孝子 イラスト/藤崎知子

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
関連タグ

授業改善の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました