ここまで育てておきたい小四の二学期【国語】
小4二学期の国語の授業において子供をどのように伸ばしていけば、以降の指導がスムーズに進むのでしょうか。国語を専門とするベテランの先生方から「世界にほこる和紙」「ごんぎつね」の授業を例にしたアドバイスをいただきます。
目次
【世界にほこる和紙】説明文の学習では要約の力を付けたい
(宮崎県公立小学校指導教諭・日高恵一)
学習指導要領の目標を実現するためには、まず、教師自身が単元の目標(付けたい力)を明確にもつことが大切です。それと同時に、子供たちなりに学ぶ目的をもてるようにすることも大切です。
そこで単元のはじめに、単元の学習を通してめざすゴール(子供たち自身の姿)はどのようなものか、そしてそのゴールに行き着くために、どのような学習を進めていくのかを明確にするのです。それによって、子供たちは主体的に学習に取り組めるようになりますし、より深い学びの実現も可能になります。
心情曲線を描くこと自体が重要ではない
四年生の説明文の学習では多様な力が求められますが、その中でも要約の力を学習時間がじっくりとれる二学期に付けたいものです。
二学期には「世界にほこる和紙」という説文の教材があります。この教材を通して学んだことを生かし、次の「伝統工芸のよさを伝えよう」で、リーフレット(新聞)にまとめる学習があります。
そこで「世界にほこる和紙」を読み始める前に、ここで学習することを生かして最終的に伝統工芸のよさをリーフレットにまとめることを、単元のゴールとして示します。教師が自作したリーフレットがあると、なお、効果的です。それによって、リーフレットをまとめるために、この教材を読む過程で書き方を学ばなければいけないという目的を、しっかりと子供たち自身にもたせるのです。
そのうえで、「例の挙げ方」を調べたり、「中心となる語や文」を見付けて、要約する練習をしたりするような学習をしていきます。
すると、子供たちはリーフレットを作るという目的があるため、より意欲的に学習に取り組むようになります。
また、「世界にほこる和紙」で学習したことは、プリントや掲示物にまとめておき、リーフレット作りの際に参考にできるようにしておくと、学習内容の確実な定着が図れます。
こうした学習の流れは物語文でも同様です。例えば「ごんぎつね」は結末が非常に印象的な物語で、どの子も「ごんが撃たれたこと」について多様な思いをもっています。
そこで初発の感想などを引用しながら、「ごんが撃たれたことをどう思うか」について話し合うということを単元のゴールとして示すことで、子供たちはより詳細に、それまでの場面を読み取っていこうと意欲的に取り組んでいきます。
その読みを深める過程では、「場面と場面をつなげてごんの気持ちの変化をとらえさせる」とか、「行動や会話に関する叙述や情景描写を基に、兵十への思いをとらえさせる」といった学習を進めていきます。
そのとき、多くの先生が心情曲線を使われます。このときに気を付けたいのは、それを描くこと自体が重要なのではないということです。心情曲線が人によって異なることを基に、なぜそう読み取ったのかについて、叙述を基に対話し、読みを深めていくようにすることが大切なのです。
【ごんぎつね】「考える音読」で作者の意図を「解釈」し、それを「評価」していく
(山口県公立小学校教諭・宮野大輔)
物語文を読んでいくとき、登場人物の気持ちを叙述に基づいて捉える力が求められており、実際に気持ちばかりを考え、「確認」していく授業が多く見られます。
しかし読み取ったことを基に、作者の意図を「解釈」し、それを「評価」していく授業を通し、作者を意識しながら読むことで、より豊かに味わうことができ、付けた力がより確かなものになっていくのだと思います。
そのような授業を行うために有効な手立ての一つが、「考える音読」という方法です。
ここでは、物語文の学習で教えたいことが詰まっている、「ごんぎつね」を基に説明していきましょう。
四、五場面を読むことでごんの思いを読み取らせる
この作品を読んだ後、子供たちに「どんなお話?」と問うと、「いたずらばかりしていたごんが、兵十のおっかあが死んだから(それをきっかけに)つぐないをした話」と答え、多くの子の説明の中には、四、五場面(月夜の晩)が入ってきません。
ではこの場面は必要ないのかというと、作者、新美南吉にとっては必要不可欠です。ですから、この場面の意味を「解釈・評価」していくのです。
具体的には、実際の文章とは違う、間違ったセンテンスカードを提示し、どこが違うのか子供たちに指摘させることで、作者の意図について着目させていきます。
例えば「ごんは道の真ん中にかくれて、じっとしていました」というカードを示すと、子供たちは「おかしいよ」「片側だよ」と指摘します。そこで「真ん中でもいいでしょ?」と問い返すと、「だって見付かっちゃダメだよ」「だって、ごんは人間のことが怖いんだから」と言います。
同様に、6枚の間違った文章のカードを示しながら、ごんは「人間は恐ろしい」という思いをもちながらも、「話を聞きたい」という思いをもって、後をついていったことを指摘させていきます。
このとき、相反する気持ちを黒板の上段と下段に色分けしながら整理することで、視覚的にも分かりやすくしていきます(資料参照)。
このようにして、最後の場面への伏線となる四、五場面を読んでいくことで、作者の新見南吉が行動描写によって、ごんの思いを描いていることを読み取らせていくのです。
「新見南吉ってすごい」
四年生でも解釈・評価読みはできます。ぜひとも挑戦してみてください。
取材・文/矢ノ浦勝之
『教育技術 小三小四』2021年10/11月号より