小2道徳「およげないりすさん」指導アイデア

使用教材:およげないりすさん(光村図書)

執筆/北海道教育大学附属札幌小学校教諭・大松浩一
監修/北海道公立小学校校長・荒井亮子、文部科学省教科調査官・浅見哲也

授業を展開するにあたり

二年生の子供たちは、学校生活に慣れ、どんなことにも意欲的です。遊びや活動に夢中になって自分の思いだけで行動してしまう場面もありますが、相手の置かれた状況や気持ちを考えたり、想像したりすることもできるようになってきます。

本授業では、誰に対しても公正、公平に接することで生まれる、みんなが感じる安心感について気付かせていきたいと考え、三つの視点を大切にしながら、授業づくりをしました。

およげないりすさん
イラストAC

①りすさんに対する動物たちの思いの変化に着目する

「およげないりすさん」は、泳げないことで遊べないりすさんと、どうすれば楽しく遊べるかを考える動物たちの姿を通して、立場の違いに捉われず、友達の気持ちを考える大切さについて話し合う教材です。

りすさんに対する動物たちの思いの変化に着目し、「どうして、りすさんを迎えに行くことにしたのだろうか」と、子供の問いが生まれるようにしていきます。

まず、3匹の動物たちがりすさんを島に連れて行かなかったのはなぜかを考えます。りすさんを島に連れて行くのには手間がかかること、りすさんだけ泳げないことなど、自分たちとの違いがあることを受け入れられない気持ちを考えます。

その後、島で遊んでいた3匹が「ちっとも楽しめなかった」という思いを取り上げることで、望んでいた状況なのに楽しめずにいるのはどうしてなのかと子供が問いをもって考え始めます。

②問い返すことで考えを深める

「りすさんも友達なのに」と考えることで、「違うところがあってもみんなにやさしく」という公正、公平の視点からだけでなく、一人ぼっちになったりすさんの気持ちを想像することや友達は助け合うことが大切だと気付くことなど、思いやりや友情という視点からも考えを深めることができます。

また、りすさんを島に運ぶ大変さやみんなのことを考える大切さについてさらに問い返すことで、さまざまな面からより深く考えることができます。

③自分たちの日常生活とつなげる

みんなと一緒に何かをしてうれしくなった体験を引き出すことで、本時に考えたこととこれからの自分の生活がつながっていきます。二年生は、自分の生活経験と本時の学習をつなげるのは難しいと感じています。

小2道徳「およげないりすさん」指導アイデアのイメージイラスト

そこで、学級の子供たちが仲よく遊んでいる写真を提示し、なぜ教師がこの写真を選んだのかを聞くことで自分たちの生活とつなげていきます。

▼ワークシート(低学年用)

これは低学年用のワークシートです。このワークシートをファイルして子供たちの学びを蓄積していきます。多くの学校でプリントやノートなどを利用して授業を進めていると思います。

授業をしていると、自分の考えをたくさん書き、発表のときに書いたことを読んでしまい、聞き手にうまく伝わっていないと感じることがあります。また、書くことを多く取り入れすぎると授業のテンポが悪くなることもありました。

書くことは、道徳の学習では大切な活動ですが、授業のどこでどのくらい書くのかを考えなければなりません。このワークシートでは、特に授業の後半で学習をふり返り、「きょうの まなびを かこう」というところを大切にしています。

実際の授業展開

タイトル
「およげないりすさん」

ねらい
泳げないことで遊べないりすを島へ連れて行くことにした動物たちの姿を通して、立場の違いに捉われず、友達の気持ちを考えて行動しようとする実践意欲や態度を育てる。

内容項目
C 公正、公平、社会正義

準備するもの
・ワークシート(児童配付用)
・仲よく遊んでいる様子のイラストや写真、教材の挿絵

▼ワークシートや導入イラストのPDFはこちらよりダウンロードできます
小二道徳学習プリント「およげないりすさん」

指導の概略(板書計画例と展開例)

教科調査官からアドバイス

文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・浅見哲也

子供はこれまでの遊びの体験から、よりよく生きていくために必要な道徳的価値のよさを自然に感じ取っていきます。それは一つの内容項目に限定できるものではなく、さまざまな内容が関わってくるものです。

大松先生は、そのような子供たち一人ひとりの思考を大切にし、導入では、イラストを提示して、子供たちが感じ取ったことを問題意識につなげています。また、登場人物を一人に限定せず、それぞれの立場で考えさせることで、決して悪気がなくても相手を傷付けてしまうことがあることに気付かせています。

さらに、りすさんがいることの楽しさを具体的に考えることで、りすさんを尊重するような考えも子供から引き出すことができました。発問に対する子供の反応を想定して問い返すなどの補助的な発問も用意しておくことで、ねらいとする[公正、公平、社会正義]を多面的・多角的に考える授業が展開されています。

イラスト/どいまき

『教育技術 小一小二』2020年7/8月号より

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