小4社会「郷土の発展に尽くす」指導アイデア

執筆/東京都公立小学校主幹教諭・向井隆一郎
編集委員/文部科学省教科調査官・小倉勝登、東京都教育庁指導部義務教育指導課・秋田博昭

目標

地域の発展に尽くした先人について、当時の世の中の課題や人々の願いに着目して、見学・調査や資料を通して調べ、地域の発展に尽くした先人の働きと関連付けて考え、地域の発展に尽くした先人は、様々な苦心や努力により当時の生活の向上に貢献したことを理解できるようにする。

小4理科「郷土の発展に尽くす」指導アイデア
写真AC

学習の流れ(10時間扱い)

問題をつくる(2時間)

○江戸のまちの変化の様子から、当時の課題に着目し、その解決に大きな役割を果たした人物の働きについて話し合う。

学習問題
玉川兄弟は、どのようにして玉川上水を完成させたのだろう。

○学習問題に対する予想を基に、学習計画を立てる。

矢印

追究する(6時間)

○玉川上水がどこをどのように通っているのかについて調べる。
○工事期間や方法、費用や人数について調べる。
○工事にはどのような苦労や工夫があったのかを調べる。(2時間)
○玉川上水が完成したことで、江戸のまちや人々の生活がどのように変わったのか調べる。(2時間)

矢印

まとめる(2時間)

○調べたことを基に、玉川兄弟の働きについて考え、文でまとめる。
○玉川兄弟の働きについて、考えたことを基に話し合う。

導入の工夫

導入の場面で、江戸のまちでは深刻な水不足に陥ったということを捉えた後に、その解決に玉川兄弟が大きな役割を果たしたという事実を示すことで、子供が玉川兄弟の働きに関心をもち、主体的に追究できるようにします。

問題をつくる(1、2/ 10時間)

江戸のまちの変化の様子から、当時の課題に着目し、その解決に大きな役割を果たした人物の働きについて話し合おう。

第1時

1602年と1644年の江戸の町の様子

これらの資料から、江戸のまちはどのような様子であったことが分かりますか。

40年間で人口が3倍近くになっています。

海を埋め立てて、人が住める場所を増やしています。

水売り

■水売り
海を埋め立てた場所では、井戸を掘っても塩水がまざっているので、飲み水は水売りから買っていたそうです。

水売りがいたのは、飲み水が足りなかったからかな。

約400年前に日本の中心となった江戸のまちでは、人口が増え続けたため、飲み水が足りなくなり、深刻な水不足になりました。
そこで江戸幕府は、多摩川から江戸のまちに水を引こうと考え、玉川兄弟に命じて玉川上水の工事を行わせたのです。

玉川兄弟の像・現在の玉川上水

玉川兄弟は、どうやって工事をしたのかな。時間はどれくらいかかったのかな。

多摩川の水は、どこからどのように江戸のまちまで送られたのだろう。

完成までに苦労したことはなかったのかな。

学習問題
玉川兄弟は、どのようにして玉川上水を完成させたのだろう。

まとめる(9、10/10時間)

学習してきたことを整理して、玉川兄弟の働きについて、地域の発展や人々の生活の向上と関連させて考え、文にまとめ、話し合う。

まとめ方の工夫

学習してきたことを基に、玉川兄弟の働きについて考えたことを文にまとめ、それを基に全体で話し合うようにします。

第10時

※第9時では、玉川兄弟の働きについて、各自考えを文でまとめます。

これまで学習してきたことを基に、私たちの住む地域にとって、玉川兄弟や玉川上水がどのような存在になっているかについて、話し合ってみましょう。

玉川兄弟の働きによって、江戸の人たちは水を使うことができるようになり、まちはさらに発展しました。江戸の人たちのくらしをよくした玉川兄弟は、私たちの誇りです。

玉川上水から分水を引くことができるようになったため、新田開発が進み、新しい村も多く生まれました。玉川上水は、東京都の発展を支えたとても大切な財産だと言えます。

玉川上水は、今でも私たちの市の中を流れています。上水の周りは緑道や公園が整備されていて、市民にとっても大切な場所です。昔も今も、大切な存在となっている玉川上水はすごいです。玉川兄弟は、地域の発展にとても大きな影響を与えた人たちです。

友達との話合いを通して、玉川兄弟が地域の発展に大きな影響を与えた人物であることを理解できるようにすることが重要です。この話合いを通して、さらに自分の考えを見直し、まとめさせるとよいでしょう。

単元づくりのポイント

当時の世の中の「課題」や人々の「願い」に着目する

本単元では、地域の発展に尽くした先人は、様々な苦心や努力により当時の生活の向上に貢献したことを理解することが求められています。しかしながら、先人が行った業績の目的を把握しないまま、その業績を調べていくと、その取組が地域の発展や人々の生活の向上にどのように貢献したのかを、子供が捉えにくくなってしまうことが考えられます。そこで、単元の導入の段階において、当時の世の中にはどのような「課題」があり、人々はどのような「願い」をもっていたのかを把握できるようにすることが重要です。そして、これらの「課題」や「願い」を解決するために、先人がどのような働きをしたのかを調べるとともに、先人の働きと地域の発展や人々の生活の向上を関連付けて考えることができるよう、単元づくりを行っていく必要があります。 

また、本単元における地域とは、都道府県内であることにも留意して単元づくりをする必要があります。


イラスト/横井智美、佐藤雅枝

『教育技術 小三小四』2019年11月号より

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