小1道徳「かぼちゃの つる」指導アイデア
執筆/北海道公立小学校・藤原友和
目次
指導項目
節度、節制
健康や安全に気を付け、物や金銭を大切にし、身の回りを整え、わがままをしないで、規則正しい生活をすること。
ねらい
日本文教出版の教科書には、「節度、節制」に関わる教材が年間で3回登場します。「付録」の教材を加えると、4回の指導が可能です。
35時間という限られた道徳科の時間に対してこんなにも高い頻度で登場するということは、それだけ一年生の指導において「節度、節制」が重視されているということでしょう。
この内容項目ですが、授業化する際には「わがままをしない」ところだけが強調されがちです。「わがままをすること=ダメなこと」と考えるのは間違いではありません。
しかし、授業でこのメッセージがあまりに強く発せられると、「ダメなことをしている友達は責めていい」という暗黙のルールができあがってしまうこともあります。
誰かが間違ったことをしたり、授業の約束を守らなかったりすると「○○君、ダメだよ!」と注意する声が飛び交うクラスでは、安心して伸び伸びと生活することができません。
そうではなく、「わがままをしないことが、自他の快適な生活につながる」ことに気付かせるまでを視野に入れた指導を心がけたいところです。
使用教材
「かぼちゃの つる」(日本文教出版 一年)
畑に植えられたかぼちゃは、自分の伸ばしたいほうへ、つるをぐんぐんと伸ばしていきます。みつばちやちょうの助言に耳を貸さず、すいかの頼みやこいぬの忠告も無視してつるを伸ばした結果、走ってきた車にひかれてつるがちぎれてしまいます。
「いたいよう」とかぼちゃが泣いても後の祭りです。授業では、注意を受け入れられなかったかぼちゃ、注意を聞いてもらえなかったみつばちたちの気持ちについて話し合った後で、「普段の自分に一番近いのは誰か」について考えます。
本時の展開
①発問「わがままを言いたくなるときって、どんなときですか」
<回答例>
・ゲームしてるとき。
・弟とけんかしてるとき。
一年生の段階では、因果関係がうまく説明できないことがありますが、「わがまましているときの気持ち」を想起することができたらよしとします。
②発問「つるを伸ばし続けているあいだ、かぼちゃはどんなことを考えていたでしょうか」
わがまましているときの気持ちを出させます。登場人物にこと寄せながら、自分自身の姿を表出することになります。
<回答例>
・うるさいなぁ。ぼくに文句を言うな。
・やりたいようにやるぞ!
わがままを言うときには、自分で自分のことをコントロールすることが難しくなっています。後半のロールプレイにつなげるため、できるだけ言葉や様子を具体的に思い描けるように、子どもの言葉を繰り返したり、実際に演じて見せたりして、イメージをふくらませます。
③発問「かぼちゃに注意した生き物たちは、聞いてもらえなくて、どんなことを考えているでしょう」
<回答例>
・嫌な気持ちだ。
・どうして言うことを聞いてくれないんだろう。かぼちゃ君は嫌なやつだなぁ。
板書に整理しながら、登場人物一人一人の場合について聞いていきます。みつばちやこいぬは、それぞれ違った観点からかぼちゃに注意しています。その違いを押さえながら発表を聞いていくようにします。
▼板書例
④発問「みんなが嫌な気持ちになってしまったね。そうならないためには、どうしたらよかったんだろう」
登場人物になったつもりでロールプレイを行います。ポイントは、「責めるだけでは、かぼちゃはますます意固地になってしまう」ということに気付かせることです。教師がかぼちゃ役をするとよいでしょう。ここまで話し合ってきた「登場人物の気持ち」を押さえながらロールプレイを進めていきます。
⑤発問「ところで、今日の登場人物の中で、一番自分に近いのは誰だったでしょう」
子どもたちが考えやすいように、ここまでの板書を使って、それぞれの登場人物がどんな振る舞いをしていたか、改めて整理します。
普段の生活を振り返り、今日の授業とつなげて考えられるように、「どんなところが?」「どうしてそう考えたの?」などと問い返しながら子どもの発表を聞きます。子どもが自己像を自分で考えられるように、受容的に聞くことが大切です。
評価
登場人物の姿を通して、自分自身の普段の様子をつかむことができたかをみとります。内省につながるように自己イメージの形成を主とするため、教師による客観的な評価との違いにはこだわりません。
イラスト/小泉直子
『教育技術 小一小二』2019年10月号より