小1国語科「小学校のことをしょうかいしよう」全時間の板書&指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小1国語科「小学校のことをしょうかいしよう」(東京書籍)の板書例、発問、想定される児童の発言、1人1台端末の活用例等を示した全時間の授業実践例を紹介します。

小一 国語科 教材名:小学校のことをしょうかいしよう(東京書籍・あたらしいこくご 一下)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/金沢大学人間社会研究域学校教育系教授・折川 司
執筆/千葉大学教育学部附属小学校・青木大和

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元は、新入生に向けて「小学校生活の1年間で楽しみにしていてほしいこと」を紹介する活動を通して、自分の経験を基に話す事柄の順序を考えて話す力を身に付けられるようにしていくことをねらっています。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

(1)言語活動と指導事項との関連

本単元では、翌年度に入学してくる新入生に小学校生活の1年間の魅力を紹介するという言語活動を設定しています。 言うまでもなく、授業の時点で新入生は入学していませんから、紹介している様子を動画として記録し、新入生の入学後に放映してもらうことを想定しています。

学年末が近づき、1年生にとって小学校生活初めての進級が迫ってくる時期の単元です。1年間、様々な経験をしてきた1年生児童は、初めての進級によって下級生ができることを期待と不安の入り交じった心境で待っていることと思います。お兄さんお姉さんとしていろいろと教えてあげたいという思い、新入生を安心させてあげたい、一緒に学校生活を楽しみたいという気持ちなどを抱いた児童の現状を踏まえて言語活動を設定していきます。

(2)教材の特性

教科書に掲載されているモデルは、春夏秋に小学校生活で自分が経験したことと、その感想を伝えるものとなっています。教科書のモデルをお手本として、自分の経験を想起して、印象に残っている行事や出来事を書き起こしていくようにします。その中から、自分が伝えたいものを春夏秋でそれぞれ選び、紹介していくようにしましょう。

教材には「はるには、」「なつには、」と順序を表す言葉が使われています。この言葉に着目できるようにし、教師が音読する際にはあえてその言葉を読まずに紹介するようにします。
実際の授業では、児童から「季節を説明していないよ!」という反応が返ってきました。「季節の説明は必要ですか。」と問い返すと、「必要です!だって、いつのことか分からないから!」という発言が聞かれました。

また、順序もあえて変えて読むようにします。
児童の指摘に対して、「なぜ順序を変えてはいけないのでしょう。」と聞きます。児童からは、「季節の順序が違ったら、聞いている人は何の説明をしているのか頭が混乱するからです。」などという声が上がります。教科書のモデルを活用することで、自分の経験に基づいて話す順序を考える意識をもつことができます。

4. 指導のアイデア

主体的な学び〉楽しみリストの作成

新入生に学校生活で楽しみにしていてほしいことを紹介するために、自分がこれまでに経験したことを想起する場が必要です。
1辺6cm程度の正方形のメモ(付箋でもよい)を配付し、児童が思い出した行事や出来事から自由に書き出していけるようにします。ある程度書き出していったら、A3サイズのワークシート(下の見本参照)を配付します。そのワークシートは、春夏秋で分かれており、思い出に残った行事を季節ごとに振り分けていけるようにしていきます。その際、同じ季節の中でも順序を意識するように声をかけ、新入生に紹介するときの順序を考えられるようにしていきます。

児童はこれまで順序立てて話したり、書いたりする経験をしています。時系列に沿った説明をすることが相手に伝わるという経験を想起させながらメモ整理することで、相手意識をより明確にもつことができ、順序立てて説明しようとすることができるでしょう。児童がこのことを通して、紹介活動を見通しながら、どのような順序で何を紹介すればよいのかを粘り強く考えることができるでしょう。

ワークシート「季節ごとの楽しみリスト」
対話的な学び〉 話す内容→個人で想起 話し方→友達と相談

今回の学習では【自分の経験に基づいて紹介する】ことがねらいの一つになっています。
話す内容を決める段階から積極的に友達と相談する時間を設けると、自分の経験や感想ではなく、友達の経験や感想を基に話す内容を決めてしまうといったことも起こり得るでしょう。
そこで、話す内容を決める際には、自分の経験を想起する時間を十分に担保していくようにします。
友達と相談することを制限しているわけではありません。実際の授業では、自分の中で曖昧な記憶を補完するために友達から情報を得ることは大いに行ってよいと伝えました。
しかし、どの内容を伝えるかを決める際や、その伝える行事や出来事に関する感想を考える際は、自分自身と対話をしながら進めていくことにしました。そのことで、順序立てて説明する際、その行事や出来事の魅力や相手を意識した話し方を考えることができ、考えを深めることができます。

一方で、話し方を工夫する際には友達との相談を積極的に取り入れたいものです。
自分の話し方は相手に伝わるものになっているのか、どこをどのように話せばより伝わるのかを相談し、自分の考えを広げていきます。1人1台端末は記録のために活用しつつ、実際に人に聞いてもらう場をしっかりと設けることが大切です。

また、録画動画は自分で見返すだけではなく、Microsoft Teamsに投稿することとし、友達が行う個人練習を観ながら、よりよい話し方を考えることができるようにしました。

深い学び〉 順序を意識した教材の振り返り

新入生に小学校を紹介する本単元の学習を進めていく中で、児童は自らの経験を想起ししながら話題を決め、教科書モデルから話型を確認しています。
また、教師が意図的に示した「話す順序や話し方の問題点」も指摘しています。これらの学習を通して、児童は相手に自分の思いを伝えるためには、順序立てて説明することが大切であることに気付いています。

単元終末には、これまで1年生の学習で取り組んできた順序を意識した学習を振り返る場を設けます。
1年生11月に行った「すきなきょうかはなあに」、12月に行った「おもい出してかこう」など、順序立てて自分の考えを説明していく活動を振り返り、自分たちが身に付けてきた学習の成果を実感できるようにします。
そして、今後の国語の学習においても順序立てて考えたり説明したりすることが大切であることを確認していきます。さらには、例えば、おもちゃの作り方や料理のレシピ、道案内など、日常生活にも順序を意識した言葉の働きが多くあることを全体で共有していくことで、これまで学習してきた知識と自分の経験とが相互に関連し合い、より考えを深めることができるでしょう。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1)自分の紹介活動の記録

自分が紹介している様子を客観的に捉えることはなかなか難しいものです。音声は語っているそばから消えていってしまうので、自分の語りがどのようなものだったかを把握するのは至難の業です。特に1年生の児童には厄介なことでしょう。
しかし、端末の録画機能を活用することができれば、自分の話している様子を比較的容易に何度も録画し、また何度も見直すことができます。その際、聞く人に伝わりやすい順序になっているか、分かりやすい声の大きさや速さになっているかといった視点を意識するよう、教師が促していくことによって、児童一人一人が自分の紹介を見つめ、ブラッシュアップする機会が生まれます。

録画した動画はMicrosoft Teamsに投稿できるようにし、学級全体で共有するとよいでしょう。
友達が投稿した録画を再生することによって、友達のよさに気付いたり、自分の語りと比較して自分の紹介を修正したりできるので、対話的な学びが強化されるはずです。

写真:録画したものをMicrosoft Teamsに投稿し、自分の紹介の仕方を振り返り、友達の紹介の仕方も見られるようにした。
録画したものをMicrosoft Teamsに投稿し、自分の紹介の仕方を振り返り、友達の紹介の仕方も見られるようにした。

6. 単元の展開(6時間扱い)

 単元名: 小学校のことをしょうかいしよう

【主な学習活動】
・第一次(1時
① 進級に伴って、新入生が入学することを確認し、小学校のことを紹介する活動に見通しをもつ。

・第二次(2時3時4時5時
② 教科書の例文を確認し、紹介するために必要な情報は何かを考える。
③ 紹介することを決めるために、紹介メモに経験したことを書き出し、ワークシートに整理する。
④~⑤ 話す声の大きさや速さを考えながら、紹介の練習をする。〈 端末活用(1)〉

・第三次(6時
⑥ 1年生で学習した順序を意識した学習と関連付けながら、単元の学習を振り返る。

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例
単元の見通し

1年生にとっても学年末を意識する時期の単元です。
4月からの学校生活を振り返り、楽しかったことや印象に残っていることを出し合い、共有していきましょう。その際、学年末までの残り日数を確かめると、この1年間の思い出に浸るだけでなく、進級への児童の意識を引き出すこともできます。
進級するということは、新しい1年生が入学してくることを意味しています。そうしたことを児童と確認していくと、初めての学年末を迎えている今だからこその児童の思いが湧き上がると思います。それは心躍る思いかもしれませんし、少し不安なものかもしれません。

また、児童に対して「入学する前や入学式のとき、どのような気持ちだったか」を問うと、新1年生が今どのような気持ちでいるか、また、近い将来どのような気持ちになるかを想像できるでしょう。
実際の授業では「早く1年生になりたかった。」「とっても楽しみだった。」といったポジティブな思いとともに、「楽しみもあったけど緊張していた。」「小学校でどんなことをするのか不安だった。」という若干ネガティブな声も紹介されました。

このように、1年生としての1年間を丁寧に振り返り、充実した1年間を豊かに感じるとともに、入学を控えた新1年生の思いにも寄り添ってみる。その上で、「これから入学する新入生は、みんなが1年前に感じたのと同じように学校生活が楽しみかもしれませんね。でも、もしかするとちょっぴり不安かもしれないですね。みんなにできることはないでしょうか。」という具合に尋ねてみましょう。
すると、「学校生活で楽しみにしていてほしいことを伝えれば、不安がなくなるのではないかな!」「1年生の1年間の様子を教えてあげれば、楽しみになると思うよ。」といった反応が返ってくるはずです。

そうした児童の思いをたくさん引き出した後で、本単元では、入学してくる新入生に小学校で楽しみにしていてほしいことを紹介する学習を行うことを全体で確認します。
そして、紹介するためには、どのような学習活動が必要かを全体で考えていきましょう。
実際の授業では、「どんなことを話せばよいのか」を教科書で確認すること、自分が話すことを決めること、話す練習をすることなどを確認し、児童が学習の見通しをもてるようにしていきました。

みんなは入学する前や入学式のときはどんな気持ちでしたか。

私は3年生のお兄ちゃんがいたので、とても楽しみでした!

僕は、とても緊張したよ。友達ができるか心配だったし…。

小学校でどんなことするのか知らなかったから、私も不安だったなあ。

どうやら楽しみだった人もいるみたいだけど、緊張したり不安だったりしたお友達もいるようですね。これから入学してくる新入生はどんな気持ちで入学してくるでしょうか。

僕と同じで不安な気持ちをもっている子もいると思います。

緊張していると思います。特にきょうだいがいない人は、小学校がどんなことをするのか知らないと思うし…。


【2時間目の板書例 】

イラスト/横井智美

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