小2 国語科「ことばで絵をつたえよう」全時間の板書&指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小2国語科「ことばで絵をつたえよう」(東京書籍)の全時間の板書例、教師の発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

 小二 国語科 教材名:ことばで絵をつたえよう(東京書籍・新しい国語 二上)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/金沢大学人間社会研究域学校教育系教授・折川 司
執筆/千葉大学教育学部附属小学校・青木大和

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元は、自分が選択した図形を描く手順を説明することを通して、相手に伝わるように、行動したことや経験したことに基づいて、話す事柄の順序を考える力の育成を目指します。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

(1)言語活動と指導事項との関連

本単元では、話し手が聞き手に対して、自分の思いが正確にわかりやすく伝わっているかを自覚できるように、「言葉で絵を伝える」という言語活動を位置付けます。
この言語活動は、三角、四角、丸、線という単純な形を組み合わせて形成された図形を児童が口頭で説明し、その説明を聞いている友達にイメージした図形を答えてもらうというものです。
図形の説明にあたっては、直接聞き手に伝えるのではなく、一度録音し、それを聞き手に聞いてもらいます。聞き手の児童は、録音を聞いてイメージしたものをワークシートに記述し、話し手の児童に伝えるようにします。

一見レクリエーションのようですから、児童は楽しみながら学習に取り組むことができるでしょう。
しかし、大切なことは「言葉で絵を伝える」という言語活動を通して、【何を】【どこに】【どのような順番で】説明すれば良いのかを考える力や、相手が描きやすいように説明する手順を考え、言葉や文の順序を工夫しながら聞き手にとってわかりやすい説明ができる力を身に付けることです。
単なる娯楽となってしまわないように、教師は児童が言語操作をする姿を見取り、順序を意識できるよう適切な手立てを講じ、児童が身に付いた力を自覚できる場面を意図的に仕組む必要があります。

(2)低学年における「話すこと・聞くこと」で重視すべき点

「話すこと・聞くこと」の学習と聞くと、スピーチのような音声表現を連想する方も多いのではないでしょうか。こうした「話す」活動は、自分の経験や知識に基づいて、感じたことや考えたことを音声で表現し、伝達する非常に重要な営みです。
ただし、話すという行為の先には、多くの場合、聞き手という存在がいることは意識しなければなりません。表したいこと、伝えたいことが聞き手に確実に届いているかを考えながら話すことが重要です。

じつは、低学年ではなかなか難しい言語行為ですから、児童が自分の好きなことを好きなように話す段階から、自分の話したいことを相手に確実に届くように工夫する段階へのステップアップとなるような学習を上手に設定していくことが必要となります。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 図形当て大会の設定と各図形への配点

本単元では、図形当て大会を設定し、児童が言語活動のイメージをもてるようにします。
その後、教師からいくつか図形を提示し、それらをどのように説明すれば聞き手にうまく伝えられるか考える時間を設けます。
各図形には、その複雑さに応じて点数を決めておき、もし聞き手に正しく伝えることができたら、話し手がその点数を獲得できるというルールにすることを共有します。その際、正しく答えることができた児童についても得点を獲得できるようにすると、話し手も聞き手も、図形の説明に含まれる【何を】【どこに】【どのように】という情報に注意深くなるでしょう。

話し手が説明する図形は、話し手自身に選択をさせていきます。
各図形を構成する三角や四角などの種類や使用する数などと各図形の配点の関係を示しておくと、話し手が見通しをもって図形を選ぶことができます。
話し手の中には、高得点を狙おうと難易度の高い図形を選ぶ児童もいるかもしれませんが、聞き手に伝わらなければ自分にも得点は入りません。比較的説明しやすいと思われる図形から順に選択するように助言するとともに、聞き手に理解してもらうためにはどのように説明をすればよいかを児童が自問し続けていくように促します。
説明の仕方を工夫したり、丁寧に説明を聞いたりする中で、粘り強く試行錯誤したり、自分の説明を振り返ってさらなる工夫に繫げたりする姿が児童に期待できます。

〈対話的な学び〉 ペアの児童から複数の児童への出題

この単元における対話的な学びで大切にしたいことは、【説明の仕方の獲得】と【自分の説明が伝わっているかの自覚】による考えの広がりや深まりです。そのことで、相手に話す事柄を伝えるためには、話す事柄の順序を考えることが大切だと児童は気付くことができます。

今回の学習では、教師が用意した4~6種類程度の図形の中から一つの図形を説明するようにします。難易度別にして児童が選択できるようにしてもよいですし、児童をグループに分け、それぞれのグループに1枚ずつ配付して担当の図形を説明する形でもかまいません。グループの人数は学級の実態や図形の種類に応じて柔軟に決めてよいでしょう。
図形当て大会を行う上で、同じ図形を選んだ友達同士で説明の仕方を考えます。
その際には、個人で説明の仕方を考えつつ、友達と相談してもよいことを伝え、児童の必要に応じて話し合えるようにします。それぞれの児童は伝えたい情報を整理して、自分の説明を録音していきます。録音した自分の説明を聞き直し、よりよい説明の仕方がないか確認していきます。

聞き手になる際は、友達の説明を聞き、イメージしたものをワークシートに記述していきます。
記述したら出題者に伝えていきます。これにより、出題した児童は自分が相手に正しく説明できていたかを自覚することができ、聞き手の児童は正確に聞き取れていたかを自覚することができます。
大切なことは、答え合わせをした後に録音を聞き直すことです。友達のどのような説明によってイメージしやすかったのかを考えたり、不正解だった場合は出題者の児童も聞き手の児童もどのような情報が必要だったのかを考え直したりすることができます。
その後、別の図形を選択した複数の児童に説明をしたり、友達の説明を聞いたりします。ペアで学習したことを生かしながら複数の友達に説明することで、自信をもって説明することができますし、ペア以外の友達の説明を聞くことで、新たな説明の仕方を知ることができます。

このように、同じグループの児童や他の複数の児童との対話により説明方法を獲得でき、自分の説明が伝わっているかを自覚できることで、考えを広げたり深めたりすることができると考えました。

〈深い学び〉 オリジナル図形を作成して出題

第4時までは教師が提示した図形を児童が説明する活動になりますが、説明方法を確認することができた第5時では、自分が作成したオリジナルの図形で出題していくようにします。
教師の図形と同じように三角、四角、丸、線を活用して図形を描いていき、その図形の説明を考えていきます。点数も児童自身が決めてもいいですし、描かれた図形を教師が確認して点数化してもよいでしょう。

第4時までは同じ図形を選んだ児童同士で話し合いますが、第5時では図形をそれぞれ個人で描いていきますので、これまでの学習を振り返りながら個別に録音まで進めていきます。
自分が納得した録音をすることができたら出題に入ります。これらの学習を通して、自分で図形を考える際に描く順序を意識するため、それが出題する際に話す順序を判断する情報となります。
他人が作った図形を見ながら伝わりやすい説明の順序を考えるよりも確かな根拠をもって判断できるため、より深く学ぶことができるでしょう。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1)説明音声の録音

本単元では、自分が選択した図形や自分が考えた図形を友達に伝えるという言語活動を行います。
そこで、自分の説明をより自覚的なものにするために録音機能を活用します。録画ではなく録音です。

1人1台端末に内蔵されているボイスレコーダーなどのアプリを活用して録音していきます。
録画になってしまうと、音声以外の情報(例えば、ジェスチャーや表情など)因子によって解答までたどり着いてしまうことがあります。これでは、言葉で説明しているとは言い切れません。
録画するのではなく録音することで、説明する児童はどのような言葉をどのような順番で活用するか考えるようになり、聞き手の児童も発せられている言葉に神経を注いで聞くようになるでしょう。

録音のメリットは、聞き直しができるところにもあります。音声言語は流れていってしまうため、録音しない限り、話し手も聞き手もそのとき行われた説明がどのようなものだったかを確かめることはできません。
録音機能を活用すれば、話し手も聞き手も説明を聞き直すことができるため、どこをよりよくすればよいのかを確認し、どの言葉によってイメージしやすかったのかを振り返ることができます。

(2)オンライン上での出題

これまでの学習は、ペアの児童同士やグループの友達との出題に留まりがちでした。
しかし1人1台端末を活用すれば、録音したものを共通フォルダに保存したり、Microsoft TeamsやGoogle classroom等の掲示板アプリの共通チャネルに投稿して出題することにより、より多くの児童と問題を出し合うことができます。

さらに、コメント機能を活用すれば、出題に解答することができますし、「どこに何をどれくらい描けばいいのかわかったよ。」などと友達の出題に対してコメントし合うこともできます。そうしたコメントにより互いの説明のよいところを見つけることができ、自分の説明の何が良かったのかを自覚するのにも役立ちます。
答えをコメント欄に入れてしまうと、まだ答えにたどり着いていない児童に正解がバレてしまうことが懸念されますが、答えをコメントするタイミングを合わせたり、正解はコメントせずに紙面で渡したりすることで解決できます。

以下の資料1は、実際に学習で活用した際のMicrosoft Teamsの投稿画面です。このように録音を全体で共有することにより、各自が分かりやすく答えやすかった児童の説明を聞くことができ、考えを広げることに繋がります。

資料1 MicrosoftTeamsの投稿画面

6. 単元の展開(5時間扱い)

 単元名: ことばで絵をつたえよう

【主な学習活動】
・第一次(1時
① これまでの学習を振り返り、単元の見通しを立てる。

・第二次(2時3時4時
② 説明するときに気を付けることを考える。
③ 説明する絵を決めて説明の仕方を考える。〈 端末活用(1)(2)〉
④ お互いに出題し合い、説明を聞いて絵を描く。〈 端末活用(1)(2)〉

・第三次(5時
⑤ オリジナル図形で出題し合い、説明を聞いて絵を描く。〈 端末活用(1)(2)〉

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例
「聞くこと」「聞く立場の存在」の大切さへの自覚

朝の会や1年生の学習でスピーチを行っている学級が多いことでしょう。
まずはこれまでの学習を振り返り、スピーチで大切にしていたことを想起できるようにします。
そのために「伝言ゲーム」を行います。各列にお題を提示し、伝言していきます。
児童は楽しみながら伝言していくはずです。答え合わせをしたら、スピーチと関連付けながら伝言ゲームのポイントを確認します。児童からは「正しく伝える」「正しく聞く」といった話し手と聞き手の立場についての発言が上がるでしょう。

ここで、今までの学習で、「聞いている人を考えてスピーチをしていたか」「話している人が伝えたいことを意識して聞いていたか」を問います。
「していた!」と自信をもって答えている児童もいれば、あまり自信のない児童もいるはずです。
そこで、聞く人を意識して話したり、話している人の伝えたいことを意識して聞いたりすることの力を高めるために「ことばで絵をつたえよう」という活動を行うことを児童に伝えます。
学級の実態に応じて「図形クイズ」や「何が描かれているのか謎解きゲーム」などと名称を変えて、意欲を高めてもよいでしょう。

ルールを確認しますが、ここで教師は今回の学習のめあても確認するようにします。
そのことで、児童はただクイズやなぞ解きを楽しむだけではなく、学習を通して身に付ける力を意識することができ、どのような学習を進めていけば、正しく説明できたり、正確に聞き取れたりするのかについて見通しをもつことができるでしょう。
さらに、1時間目には教師が作成した図形についての説明をあらかじめ録音し、児童に出題してみましょう。解答を確認し、今後の学習では児童が出題者になることを伝え、見通しをもてるようにします。


【2時間目の板書例 】

2時間目の板書例

イラスト/横井智美

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