小一道徳授業ルポ「すてきがいっぱい」すてきなものがあったらどんな気持ちになるのか考える
道徳の研究に力を入れている小学校へ文部科学省の浅見哲也教科調査官にご同行いただき、その授業実践をご紹介するルポ。今回は東京都台東区立根岸小学校です。
目次
教材
教材名: 「すてきがいっぱい」(学校図書)
主題:ぼくの わたしの いいところ 〈 A個性の伸長 〉
導入
本時のねらい
自分の特徴や長所を見付けようとする心情を育てる。
1 ねらいとする道徳的価値に興味をもつ
「好きなことや得意なことはなんですか」と教師が子供たちに投げかけ、価値への方向付けを図るため、多くの子供に発表させます。
子供たちの発言
お料理
折り紙
ゲーム
指編み
自転車
展開
2 教師の範読を聞き、教材「すてきがいっぱい」を基に話し合う
教科書の挿絵を基にした紙芝居で教材提示を行います。その後、「4人のお友達のすてきなところはどこでしょう」 と発問し、4人のそれぞれのすてきだと思うところを整理しながら板書します。
中心発問
「すてきだね」と言われたとき、4人は、どう思ったでしょう。
子供たちの発言
うれしい。
難しいことも、もっとやりたくなる。
ずうっと好き。
発問
4人に、どんな言葉をかけてあげたいですか。
子供たちの発言
みんなすごいね。
いろんなことができるからがんばってね。
応援しているよ。
授業の工夫
中心発問では、登場する4人が「すてきだね 」と言われてうれしいと感じた場面から、自分の特徴をほめられたときの気持ちを想像させ、板書に子供たちの言葉で整理しました。よさがあると気持ちがよくなり、意欲が湧いてくることを確認し、次は自分の好きなことや得意なことを考えることにつなげていきました。
浅見先生の花まるポイント
4人の登場人物の得意なところだけではなく、やさしい、面白いなど性格のよさに触れていたことで、子供たちのよさへの捉え方が広がっていました。
3 自己の経験をふり返って話し合う。
発問に対し、ワークシートに書いた後、発表して、意見を共有します。
発問
4人へ、自分の好きなことや得意なことをお話ししましょう。
子供たちのワークシートから
あやとりがとくいです。
わたしはおりがみがとくいだよ。いろいろなものがつくれるよ。
スケボーがいちばんすきです。もっとれんしゅうしてみんなにおしえたいです。
終末
4 教師の説話を聞く
教師が小学校、中学校時代に好きだったことを紹介した後、サプライズプレゼントとして、保護者に書いてもらった「よいところカード」を子供たちに渡します。
文部科学省教科調査官 浅見哲也先生からのアドバイス
教材の場面絵に吹き出しを付けて、技能に伴う性格を結び付ける
小学一年生によいところを聞くと、かけっこが速い、絵を描くのが上手など、友達と比べて目に見えて秀でていることだと思うのが一般的な傾向です。福田先生は、教材のそれぞれの場面絵に吹き出しを付けて、すてきな技能に伴う性格を結び付け、人の性格にもよいところがあることを感じられるようにしています。また、すてきなものが自分にあったらどんな気持ちになるのかに焦点を当てて考えることにより、ねらいに示されている道徳的心情が育てられる授業を展開していました。
取材・文・構成/浅原孝子 撮影/北村瑞斗
『教育技術 小一小二』 2021年10/11月号より