小3道徳「SL公園で」指導アイデア
執筆/前・千葉県公立小学校教諭・河田光輔
監修/千葉県公立中学校校長・大舘昭彦、文部科学省教科調査官・浅見哲也
使用教材:SL公園で(東京書籍)
目次
授業を展開するにあたり
1 教科書教材を用いた授業の広がり
道徳が教科化されたことにより、主たる教材である教科用図書(以下、教科書)を用いた授業が広く行われ、授業の量的確保につながっています。そこで教師には、教科書教材のよさを生かした指導方法の工夫が求められているのではないでしょうか。教材のよさとは、教材に含まれる道徳的価値であり、教材の特長だと考えています。
2 本教材のあらすじ
「SL公園で」という物語の前半は、ある公園のシンボルであるSL蒸気機関車の展示物の上に、友達が登ってしまうのを止められない主人公が描かれています。物語の後半は、その場に通りかかった女性が、SL蒸気機関車に登っている友達を毅然とした態度で注意し、登らなかった主人公に対して「あなたは登らなかったのね。えらかったわ。でも、みんなを止められたらよかったのにね」と声をかけます。その後、主人公と友達は自分たちの行動を反省しながら帰るところが描かれています。
3 本教材のよさについて
『小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編』(以下、解説)の「善悪の判断、自律、自由と責任」を見ると、「物事の善悪について的確に判断し、自ら正しいと信じるところに従って主体的に行動すること、自由を大切にするとともに、それに伴う自律性や責任を自覚することに関する内容項目である。」とあります。
第三、第四学年については、「正しいと判断したことは、自信をもって行うこと」とあり、指導の要点のなかには、「指導に当たっては、正しいことを行えないときの後ろめたさや、自ら信じることに従って正しいことを行ったときの充実した気持ちを考え、正しいと判断したことは自信をもって行い、正しくないと判断したことは行わないようにする態度を育てる必要がある。特に、正しくないと考えられることを人に勧めないことはもとより、人から勧められたときにきっぱりと断ったり、正しくないと考えられることをしている人を止めたりできるように指導することが大切である。」とあります。
色囲み部(執筆者が追記)を本教材のよさ、教材に含まれる道徳的価値と捉えました。
4 本教材へつなぐ導入の工夫
授業を行ううえで、児童がどのような価値観をもち、どのような生活経験をもっているのかを把握しておくことは重要です。
そこで、資料1のような事前調査が有効になります。道徳的価値に関する質問への回答結果に基づき、資料2のような児童の価値観のグラフを作成することができます。児童が自己を見つめるところから始まる導入の工夫によって、児童の問題意識を喚起し、本教材へとつなげていきたいものです。
▼資料1 事前調査
▼資料2 事前調査から作成した児童の価値観のグラフ
▼ワークシート
実際の授業展開
教材名
SL公園で
主題名
正しいと思うことを行う気持ち
ねらい
正しいと思うことを行うよさや正しくないことを止める難しさに気付き、正しいと思うことを行う気持ちを大切にしていきたいという意欲を高める。
内容項目
A 善悪の判断、自律、自由と責任
準備するもの
・ワークシート(児童配付用)
・児童の価値観のグラフ(黒板掲示用)
・教科書教材の場面絵 (黒板掲示用)