小5社会「公害からくらしを守る」指導アイデア
執筆/埼玉県公立小学校教諭・武藤晃広
編集委員/文部科学省教科調査官・小倉勝登

目次
目標
公害の発生時期や経過、人々の協力や努力などに着目して、地図帳や各種の資料で調べ、まとめ、公害防止の取組を捉え、その働きを考え、表現することを通して、関係機関や地域の人々の様々な努力により、公害の防止や生活環境の改善が図られてきたことを理解するとともに、公害から国土の環境や国民の健康な生活を守ることを大切にしようとする態度を養う。
学習の流れ(7時間扱い)
問題をつくる(1時間)
○ 現在とかつての鴨川の写真を比較し、疑問を出し合い、学習問題をつくる。
〈学習問題〉
鴨川の環境は、誰が、どのようにして取り戻したのでしょうか。
○ 学習問題に対する予想をし、学習計画を立てる。

追究する(4時間)
○ 当時の新聞記事等から公害が社会問題になっていたことに気付き、鴨川が汚れていた理由を調べる。
○「誰が」「どのように」鴨川をきれいにしたか、その取組を調べる。
○ きれいになった鴨川を「誰が」「どのように」守っているか、その取組を調べる。

まとめる(2時間)
○ 鴨川を守るための取組を「市民」「行政」「企業(職人)」の立場からまとめ、共通する思いについて話し合う。
○ 自然や環境を守るために、自分たちにできることについて話し合う。
導入の工夫
地域の人々の憩いの場になっている現在の鴨川と、汚れているかつての鴨川の写真を提示し、違いに驚き、疑問をもつことから学習問題に結び付けるようにします。
問題をつくる(1/7時間)
現在の鴨川とかつての鴨川の写真を比較し、疑問を出し合います。
写真を見て、この川はどんな川だと思いますか。

子供が川に入って遊んでいる。生き物がたくさんいる川なんじゃないかな?
きれいな川だと思う! 近くにあったらいいな。
次の写真の川は、どんな川だと思いますか。

泡やごみがたくさんある! 汚れている川だ。
写真が白黒だよ。どこかの昔の川なんじゃないかな?
この写真は、京都府の鴨川の今と昔の写真です。疑問に思うことはありませんか。
今と昔では全然違う! なんでこんなに汚かったのかな?
人が写っていないよ。近づきたくないな。誰がきれいにしたのかな?
臭いもひどそうです。どうやって、きれいな川にしたのでしょうか。
学習問題
鴨川の環境は、誰が、どのようにして取り戻したのでしょうか。
まとめる(6/7時間)
鴨川を守るための取組を「市民」「行政」「企業(職人)」の立場からまとめ、共通する思いについて話し合います。
まとめ方の工夫
3つの異なる立場からこれまでの取組についてまとめ、それぞれの努力や相互の協力があって、きれいな鴨川になっていることを確かめ合います。そして、これからも、ずっときれいな鴨川であってほしいという共通の願いに気付かせるようにします。
3つの立場から取組をまとめてみて、気が付いたことはありませんか。
それぞれが協力し合っているんだね。
職人さんはこれからも、鴨川の水を使いたいんだ。
鴨川はこれからも、みんなの大切な場所であってほしいんだ。
鴨川がきれいであることで、魅力的な町になっているんだね。
大変かもしれないけれど、協力し合って鴨川を守ることは、それぞれにとって大きなメリットがあるのですね。
単元づくりのポイント
追究する段階では、当時の写真や新聞記事等の資料を用いて、高度経済成長の反面、全国的に公害が社会問題になっていたことに気付かせます。まとめる段階では、異なる立場からの取組をまとめて話し合うことで、これからも鴨川を守っていきたいという共通の思いに気付かせます。
その際、相互の協力だけでなく、これからもきれいな鴨川を守っていくことで生まれるメリットに着目させ、持続可能な社会をつくるための取組について、子供自身が関わってくことへ肯定的な思いをもたせたいですね。
イラスト/横井智美、栗原清
『教育技術 小五小六』2020年3月号より