小6 国語科「情報と情報をつなげて伝えるとき」ワークシート・端末活用例&全時間の指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小6国語科「情報と情報をつなげて伝えるとき」(光村図書)の全時間のワークシート、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/山梨大学大学院教授・茅野政徳
執筆/福岡教育大附属福岡小学校・大村拓也
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、文章を書く際に「集めた情報を図示し、関係付けて整理する」資質・能力を育成することを目的とします。具体的には、情報と情報の関係をモデル化した図を基に、報告書に、定義や具体例を書き加えたり、まとまりの共通点を書いたりして、情報と情報を関係付けて整理する力です。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
本実践では、ブラジルと日本の農業についての報告文を書き直す言語活動を設定します。
分かりやすく報告文に書きまとめるためには、集めた情報を無目的に並べるのではなく、抽象と具体、キーワードとその定義、複数の情報の共通点など情報と情報を目的や意図に応じて関係付けて自分の考えを明確に伝える必要があります。このことは、複数の情報を図化などして関係付ける知識を活用する必然性を高めた学習となるでしょう。
その他の言語活動として、自分が書いた報告文を書き直す活動も考えられます。
「書くことを学ぶ単元」と本単元の意図的な配列を図ったり、本単元の後に説明的文章を「読むことを学ぶ単元」を位置付けたりと、指導時期を工夫するカリキュラム・マネジメントを視野に入れてふさわしい言語活動を判断してください。どの言語活動でも、情報と情報を関係付けて書く必然性を高めたり、獲得した知識を活用して読んだりすることで身に付けた力を実感できるはずです。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 情報を関係付ける目的や意図を重視する
主体的な学びを生み出す上で大切なのは、目的や意図を明確にすること、そして学んだことを生かすことです。
本単元では、情報と情報との関係について図化して捉えたことを端末に蓄積します(5.(1)を参照)。そうすることで文章を書くときに、「考えとその理由、事例配列の意図、抽象と具体、キーワードとその定義、複数の情報の共通点」などから目的や意図に応じて選択することができます。
本単元で取り扱う「ブラジルと日本の農業についての報告文を書き直す言語活動」においては、伝えたい内容の一つである「アグロフォレストリー」という農法の専門用語を分かりやすく伝えていきます。
その際、「Aとは、Bのことである」という定義の書き方を教えることにとどまらず、その書き方をすることでどのような効果が生まれるのかを話し合うことが大切です。最後に「Aとは、Bのことである」という書き方を図化して蓄積することで、今後も活用可能な知識として捉えることができます。
〈対話的な学び〉 書き表し方の違いを参考にし合う
高学年「書くこと」における対話的な学びは、「自分と異なる考え」に出合うことで、内容を再検討したり、文章全体の構成を明確にしたりすることにつながることだと考えます。そのために、自分と異なる考えの友達と話し合う学習を重視します。
単元の1時間目でブラジルの農業についての定義や具体例を基に文章を書き直す場面では、書き直した文章を友達と比べ、お互いの考えを聞き合う活動を設定しました。
この活動の中で、一人一人伝えたいことの中心やその根拠が異なるため、内容や構成にも違いが出ることに気付いていきます。友達との対話の結果、説得力の高い内容や構成を捉え、図化した書き方のまとめに付加・修正することが大切です。
〈深い学び〉 集めた情報を関係付けることで、説得力の高い文章を書く
高学年「書くこと」において深い学びに向かうためには、文章全体における情報同士の関係について精査し、自分の文章の内容や構成を問い直す必要があります。そのためには、構成を工夫して書く前と後の文章を比較し、文章全体の構成の効果に気付く手立てを講じることが重要です。
例えば、2時間目では、日本の農業について調べたことをまとめた段落とブラジルの農業についてまとめた段落の共通点を見付け、まとめの段落を書く活動を計画しています。ここでも、「情報同士の共通点を見付ける書き方の工夫」を図化し、その効果を話し合います。そうすることで、共通点の有無によってまとめの説得力がどのように変化するのかを問い直そうとする、深い学びに向かうことができると考えます。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
(1)文章の書き方における情報と情報の関係を図化し、端末に蓄積
単元の1・2時間目の後半には、「情報と情報の関係を図化し、自分の考えをまとめる活動」を設定しました。書くことの学習において、集めた情報を無目的に配列したり、場当たり的に文章を書いたりするのではなく、目的や意図に応じて、的確に構成を仕組むことが大切です。そのためには、書くことにおける知識及び技能を可視化して使える状態にしておくことを重視します。文章における情報と情報の関係を図として保存することは、自分が身に付けた書き方を客観的に自覚したり、今後の文章を書くことに生かしたりする上で有効だと考えます。
図を書く際には、スライドなどにおける図形の挿入を組み合わせてまとめることになります。この図の横には、情報と情報の関係における効果や具体的に文章に落とすときにはどのようなつなぎ言葉が使えるのかまで書くことを大切にします。そうすることで、子供が発揮した書くことの知識及び技能を総括的に評価することができます。
実態によってまだ子供が慣れていないときには、教師がモデルを示し、形や色、線や矢印のつなぎ方に込めた意味を説明していくとよいでしょう。子供が手書きを求める場合には、学習ノートに手書きしたものを端末で撮影して保存する方法もあります。
6. 単元の展開(2時間扱い)
単元名:集めるときに使おう ~情報と情報をつなげて伝えるとき~
【主な学習活動】
(1時、2時 )
① ブラジルの農業についての定義や具体例を基に文章を書き直す。 〈 端末活用(1)〉
② 日本の農業について調べたことをまとめた段落とブラジルの農業についてまとめた段落の共通点を見つけ、まとめの段落を書く。 〈 端末活用(2)〉
※1・2時間目ともに学習の後半は、学んだ情報と情報の関係について図化して書きまとめる。
他に
・自分がこれから書く報告文の材料を収集した段階で、その情報をどのように関係付ければ文章の説得力が高まるかを話し合う(内容検討段階)。
などの言語活動も考えられる。
ワークシート・端末活用例と全時間の指導アイデア
イラスト/横井智美