【相談募集中】文章をダメ出しされて困っています…

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通知表関連記事まとめ:所見の書き方から「出さない」選択まで

神奈川県公立学校 教頭

鈴木夏來

学級通信や通知表の所見など、自信をもって書いた文章が、教務や校長先生からダメ出しされて凹んだなんて経験ありませんか? ここでは「みん教相談室」に寄せられた質問に対して、神奈川県立総合教育センター主幹兼指導主事・鈴木夏來先生が回答した内容を紹介します。

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所見や学級通信の文章がなかなか上手く書けません。一文が長い、あるいは話が広がり過ぎると言われて困っています。また、教務が変わると以前はよかったものがダメと言われて困ります。誰が読んでも読みやすい文章を書く極意を知りたいです。(れんこん先生・30代女性)

まずは質問に寄せて

貴重なご質問、ありがとうございます。質問してくだったことに、まずは感謝申し上げます。「みん教相談室」 に質問すること自体に、次のような悩みやためらいを抱える方が多くいらっしゃると思います。

  • 「今さら、こんなことを質問してもいいのだろうか?」
  • 「何でも質問してもいいのは、初任まで。2年目以降は、自ら聞いてはならない」
  • 「〇年目は、もはや若手ではない。むしろ、中堅。教える立場」

職場では若手が次々と入り、数年で学年主任を任されることがあるでしょう。その間、忙しくて、なかなか人に聞く機会もなかったのではありませんか。 近くの人に聞こうにも、誰もが忙しそうにしている。

なので、自分自身でなんとか、本を読んだり、インターネットで調べたりする。しかしそういう努力に対して、

  • 「まったく最近の若手は……」
  • 「分からないことがあると、なんでもすぐネットで調べようとする」
  • 「ハウツー本やマニュアルにこだわって、自己解決ができない」

などと批判されることがあります。先輩に聞こうが、本を読もうが、ネットで調べようが、手段が異なるだけ。それらはいずれも対話。学習指導要領で言うところの「対話的な学び」です。「先哲との対話」とも言えるでしょう。

どんな手段であれ今、目の前で起きている問題が解決できれば、それで良いと私は思います。

さて、前置きが長くなりましたが、相談に対する回答です。

伝わればそれで良い

「所見や学級通信の文章がなかなか上手く書けません」とありますが、結論から申し上げると、所見も学級通信も、うまく書く必要は全くありません。本当は、いずれも発行義務がないので、出す必要さえないものだと私は思いますが、そうは言っても諸事情により出さねばならなくなったとしましょう。

たとえば、給食当番。

■3班:白衣の洗濯 & アイロンがけ
■4班:給食用の帽子 & 専用マスクの用意

上記について、保護者に連絡する必要があったとします。

好ましくない文例

「給食当番については、令和〇年○月○日発出の学級通信なかよし第1号第四項「給食当番の順番及びお願いについて」において周知したところですが、次週については4班が給食当番となりますので、4班におかれましては、給食用の帽子及び専用マスクを御用意いただくとともに、3班におかれましては、お手数おかけし恐縮ですが、白衣の洗濯及びアイロンがけにつきまして、特段の配慮のほど、よろしくお願い申し上げます。」

この文章はいかがでしょうか。一文が長く、広がり過ぎているように見えます。教育委員会発出文書(=公用文)のように私が作文してみたものです。うまく、正しく書いたつもりですが、伝わりましたか?

例えば、外国にかかわりのある子供がクラスにいる場合、その保護者が日本語を分からなかったりするケースもあります。この場合、公用文のルールに則って正しく書いたつもりでも、保護者へ正しく伝わるとは限らないようです。

誰が読んでも読みやすい文章の極意のひとつに、「文章にしない」というのもあります。伝えたいことを箇条書きにするのも一案ではないでしょうか。

学級通信での失敗例

質問からは多少脱線しますが、これは実際に起こった学級通信での私の失敗例です。作文の書き方をクラスで何度か指導した後でした。「こういう表現が良い」「面白い」「読み手をぐいとつかませる」など、クラスのみんなの参考になるからと思い、見本となるような児童の作文を学級通信に載せたのです。

特定の児童の作文を学級通信に掲載したら…

  • 「なぜいつも〇〇さんばかり載るのですか!?」
  • 「どうしてうちの子は載らないのですか!?」
  • 「ひいきしている」
  • 「不公平ではありませんか」

後に保護者から、厳しいお叱りをもらいました。このことを反省し、今度は全員の作文を学級通信に載せました。

全員の作文を学級通信に掲載したら…

  • 「〇〇さんは作文が上手だからよいが、うちの子は苦手。数行しか書けない。恥をかかされた気分」
  • 「どうして誤りを直して載せなかったのか。それを指導するのが教師ではないのか」
  • 「うちの子の文章が勝手に直されている。どうして直すのか。」
  • 「なぜ全員載せるのか、意図が分からない」
  • 「だったら、載せなくてよいのでは」

すると今度は上記のような厳しいお叱りをいただきました。そこで、この反省から学級通信に載せる回数をチェックし、均等になるようにしたところ、チェックに時間がかかり過ぎました。

全員を1回載せたことを確認してから2巡目としたいのに、載せたい子が欠席したり、載ることを嫌がったりして、公平に載せることが難しい。保護者に事前に見てもらったり、許可願いを出したり、その許可願いが回収できなかったり…。

そんなことを繰り返し、もはや誰のために、何を目的にやっているのか自分でも分からず。気づけば私自身、学級通信を書くのが苦痛になっていたのです。その後は、不定期発行や、そもそも発行しないという選択肢を取りました。

あえて文章にするなら

文章を上手く書く極意とは先にも述べた通り、無理に文章にせずとも箇条書きでも伝わります。それでも、文章にしなければならない時は次の点を心がけてください。

文章は敬体(です・ます調)にする

である調で書くと、「偉そうだ」、「主張するな」など、誤解を招くケースもあります。可能な限り、「です・ます」調でやんわりと書きましょう。

一文を短くする

文章を書く際、一文を短くすると、次のような効果があります。

  • 短期記憶がしやすい。
  • 読み手の目線の移動距離が減る。
  • 早く読める。
  • 結論が分かる。
  • パッと見て、文意が伝わりやすい。

一文は短ければ短いほど良いと言われます。一文の長さについては諸説あり、30文字前後までとも40文字前後までとも言われています。1行以内ないし、1行半くらい。

一文の読点(、)の数は、結果として2~3個になるでしょうか。一文が3行目にさしかかったり、読点の数が4個も5個も並んだりするときが、自分自身への警告サイン。長くなった文章を二つに分けてみましょう。

教育専門用語を避ける

たとえば次のような業界用語は、極力避けましょう。

「拠点校指導教員」「中堅教諭等資質向上研修」「研究授業」「公開研究発表会」「小教研」「学習指導案」「重点校」「SSW」「板書」「運指」「朱書き」「空書き」 など

教員の世界では通じても、保護者にはよく分かりません。「意味が分からない」「上から目線」と思われます。分かりやすいことばに置き換えたり、解説を加えたり、別の表現方法を考えたりしましょう。

教務によって、求める文章は変わるもの

所見の書き方については、私の書いたこちらの記事を参考になさってください。概要を申し上げると、書かねばならない場合、そのときの学校長が求める文章を書くことが大切です(=自分が良いと思う文章が必ずしも良いとは限らない)。

その学校において、学校長がもっとも信頼を寄せている教員の書いた所見や学級通信を見せてもらいましょう。ヒントが見つかると思います。なお、学校長が変われば、「良い文章」なるものは変わります 。

私は教員時代、そのことがなかなか分からず、自分が良いと思うことを書いては赤を入れられたり、注意を受けたりしていました。独りよがりになっていたということです。10年くらい経って、ようやく気づきました。

誰が読んでも読みやすい文章は、「ユニバーサルデザイン」と言われています。 先の極意「文章にしないこと」と関連しますが、ユニバーサルデザインは、あくまでも誰が読んでも読みやすいようにすることを目指す、心掛けることであって、必ずしも実践できることではありません。

日本語で書かれた文章におけるユニバーサルデザインとは、たとえば次のようなことを行います。

  • パソコンで書く場合、読みやすい「ユニバーサルフォント」と言われる字体に変換する(教科書体、UD体、メイリオ体など)。
  • 漢字は総ルビとする。読める・読めないという子どもの問題を「習った」「習っていない」という学年配当漢字で判断してはならない。
  • 分かち書きを心掛ける。(例:むかしむかしあるところに → むかし むかし ある ところに)
  • 文節の途中で改行をしない。マンガの吹き出しのように、文章の区切れ目で適宜改行する。

このことからも、すべてを実践するのは意外と難しく、 何より労力がかかります。 日本語はそもそも世界の公用語ではありませんし、公用語と言われる英語で書いたら今度は日本人の子どもの多くが分からない。

複数の言語で表記するのは時間・労力・費用というコストがかかります。働き方改革に一部逆行する面もあるでしょう。

私自身行政10年目ですが、文章については、今も悩み、苦労しています。最後に、伝わる文章の参考にしているおすすめの文献を紹介します。参考になれば幸いです。

▼ 理科系の作文技術 木下是雄 中央公論新社


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