よい聞き手を育てる「傾聴スキル」~国語オンライン授業より~

長引くコロナ禍により、全国の小学校でも、オンラインを活用した授業がますます重要視されるようになりました。今回は、筑波大学附属小学校・国語科教諭の白坂洋一先生が実践する、「傾聴スキル」に着目した授業レポートを紹介します。

執筆/筑波大学附属小学校教諭 白坂洋一

しらさかよういち 筑波大学附属小学校国語科教諭。鹿児島県出身。鹿児島県公立小学校教諭を経て、現職。学校図書国語教科書編集委員。『例解学習漢字辞典[第九版]』(小学館)編集委員。著書に『子どもを読書好きにするために親ができること』(小学館)『子どもの思考が動き出す 国語授業4つの発問 』(東洋館出版)など多数。

1.「伝える」ことの難しさ

新型コロナウイルス感染拡大のため、全国で休校措置がとられました。授業ができない期間も、子どもの学びを継続させるため、本校でもオンラインによる課題や動画の配信、学級会がなされました。休校期間であっても、学びの質を変えたくないという思いでした。

オンライン学級会を行った際、気付いたことがあります。それは、「伝える」ことの難しさ。ある話題について、小グループで話し合う場面がありましたが、教室内であれば容易に伝わる内容であるにもかかわらず、聞き手である友達に上手く伝わらないのです。「言いたいことは、そういうことか」という共感が広がらないのです。

教室での対面授業とは異なり、オンラインでは表情や声色などの非言語的な情報が伝わりにくいのです。解釈や理解は相手に依存するため、「自分はそんな意図で言ってない」と思っていても、話し手はコントロールすることができません。意思疎通に齟齬が生まれやすい状態にあります。だからこそ、「伝える」ことの難しさを実感することとなりました。

では、話し方を中心とした「話型指導」をしていけばよいか。それは否です。

話合いは、話すことによって成り立っているようにみえますが、実はそうとは限りません。聞くことによっても成り立っています。解釈や理解は相手に依存します。そのために、さまざまな受け止め方を生み出します。その受け止め方の違いから、話合いは活性化します。聞くことは、交流の根本を支えているといえるでしょう。

2.「傾聴スキル」への着目

聞き方指導には、一般的に、次に示すような態度面に着目したものが多いようです。

聞き方指導「あいうえお」
あ…相手を見て   
い…いい姿勢で   
う…うなずきながら
え…笑顔で
お…終わりまで

友達の思いや考えを、しっかり受け止める聞き方が示されています。しかし、その聞き方が、交流を促すかという点では疑問に残ります。

そこで着目したのが「傾聴スキル」です。傾聴は、相手の立場や気持ちを尊重して共感することで、相手を理解することです。具体的には復唱したり、確認したり、理由を問い返したりすることが重要な体験になります。

聞くことの風土が学級に育まれてこそ、話型指導も活きてきます。休校期間にオンライン上で指導することによって、対面授業が再開された後の話合いで、より活性化すると考えました。

「傾聴スキル」に着目し、2年生の授業で実践した例を紹介します。

3.授業実践例(2年生)

「あったらいいな、こんなもの」(こくご2年上/光村図書)は、「今はないけれど、こんなものがあったらいいな」というものを話題に、質問しながら話し合うことを通して、より具体的に詳しく考える活動です。主たるねらいは、話し手が知らせたいことや自分が聞きたいことを落とさないように集中して聞き、話の内容をとらえて感想をもつことです。

本実践では、まず、あったらいいなと思うものを絵に描いています。その上で、小グループで、話題から逸れずに話合いを進めることをねらっています。そのための、具体的展開方法として、以下の3つの「傾聴スキル」について指導しました。

3つの「傾聴スキル」
1.【復唱】 相手が発した言葉をくり返す
2.【確認】「どういうこと?」「……って何?」
3.【理由の問い返し】「どうして、そう考えたの?」「なんで?」

【復唱】は、相手が発した言葉をくり返して、会話を進めていくスキルで、「オウム返し」とも言われます。話し手にとってみれば、自分の発した言葉が正しく返ってくるため、安心して話すことができるのです。

3つの「傾聴スキル」を使った話合いを進める上で、必要になってくるのがモニタリングです。教師は小グループでの話合いに入り、子どもたちの話合いの様子を観察します。話合いの後は、そこで使われたコツについて、全体にフィードバックしながら、コツを価値付け、意識させていきます。

次に示す子どもの絵に対する傾聴スキルには、具体的に以下のようなものがありました。

あったらいいなと思うものを絵に描いた

子どもの絵に対する「傾聴スキル」
【復唱】「100秒を1秒で走るかぁ」
    「磁石がついている」
【確認】「ボタンって、どういうこと?」
    「磁石N極って何?」
【理由の問い返し】「この靴を考えようと思ったのはどうして?」

単元の終末では、「3つの傾聴スキルを使うと、話合いはどうなる?」について、子どもたちに問いかけました。子どもたちからは「話合いが楽しくなる」「早く進む」「安心する」という答えが出されました。「どうして?」と問い返すと、「考えた理由を話してくれる」「おもしろい考えを話してくれる」など、自分たちの話合いをふり返った実感が言葉となり返ってきました。

今回、オンラインを活用し 「傾聴スキル」 を指導することによって、 学校再開後の対面授業でも、それが活かされた話合いが展開されるようになりました。

コロナ禍による休校をきっかけに、オンラインを活用した授業等が増えつつある今。オンライン活用で生じる不便や問題点も、ちょっとしたアイデアと場の工夫で、子供たちの学習スキルのアップにつなげられることが分かりました。

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