6年最後の学校行事「卒業プロジェクト」を成功させよう
卒業生にとっての三学期は、進学という新しい生活の「小学校生活の集大成の学期」です。6年間のまとめ、そして、中学校進学という新しい生活をスタートすることに向けての準備期間であり、自分を見つめ直す3か月でもあります。最大で最後の行事である卒業式に向け、卒業プロジェクトを子供たちの手で行っていきましょう。
執筆/ 広島県公立小学校教頭・川原陽子(広島県小学校教育研究会 特別活動部会研究部)

目次
“中学1年生の0学期”と言われる6年三学期
1月から3月、この3か月間は、最高学年である6年生が5年生に学校の文化のバトンを渡し、5年生はそれを受け継ぎ発展させていくという大事な時期です。
昨年度、2月、3月の学校生活がなくなってしまったことでこの時期の重要性に気付かれた先生方も多かったのでは?
三学期は、次年度につなげる意識が大事です! 今年の取組が、来年の取組につながります。

思春期の入り口に立っている子供たち。心は刻々と変化し、成長しています。
6年生が自信と満足感を胸いっぱいに卒業式の日を迎えることができるよう、何をしたいのか、何をすべきか、何ができるかを子供たちと共有して、子供たちの願いを引き出し、その願いが実現できるようサポートしていくことが求められます。子供たちを信頼して任せてみましょう。
ゴールイメージを共有して、逆向きにさまざまなプロジェクトや各行事を設計することが大切です。
学校にレガシーを残そう
早い段階で「卒業への道プロジェクトガイド」を配付し、それを活用するのも一案です。自分たちはどのようなことをみんなの心や学校に残して卒業して行くのかについて、まずはイメージを共有することを大事にしたいものです。
① 学級会で自分たちのプロジェクトについて決定し進める。
② 担任は、学校の行事等について確認し、スケジュールを調整して見通しをもたせる。
③ 学年で実施するものの場合や他学年との活動は、あらかじめ関係者で相談しておく。


過去の行事に”プラスアルファ”がポイント
POINT 1
6年生は、これまでの5年間、歴代の卒業生が行ってきた卒業までの取組を見ているので「6年生になったら○○をやってみたい」という願いをもっています。その気持ちを大事にするのはもちろんですが、自分たちらしさを加えたり、オリジナリティを追求したりするよう助言することで、協力して知恵を出し合う場を作り出します(人間関係形成)。
POINT 2
様々な児童会行事(6年生を送る会)、教科とのコラボ集会(家庭科等)、感謝の会(先生方と、保護者と)などの集会は、準備に時間のかかるプロジェクトなので、これらを軸に、他に簡単に行えそうなプロジェクトをプラスしていくと、計画がしやすくなります。全員が自分のよさを生かして主体的に、活動できる計画にしましょう。

【関連記事】小学校卒業までのカウントダウン~スケジュール管理とプロジェクト作成
子どもたちが活動のイメージを具体的に描けるように支援しよう
子供たちとスケジュールを共有する
卒業プロジェクトのながれ ステップ1~ステップ4

子供たちと活動のイメージを共有する

卒業プロジェクトを企画するための「卒業への道プロジェクトガイド」を作成し、活動のイメージを全体で共有します。

三学期の学習や活動はすべて卒業への道につながっているとイメージしよう
●家庭科の時間に学習したことを生かして ➡「6年生を送る会」でペア学年にクッキーをごちそうするために調理実習を行う。

●国語の時間「今私は、ぼくは」で書いた作文 ➡ 保護者を招いた感謝の会で、保護者に向けて朗読する。

卒業プロジェクト活動成功のポイントQ&A

Q. 話し合う時間や打ち合わせの時間が、なかなか取れない…。
A. 給食準備時間や給食時間(ランチミーティング)をうまく活用すると時間が作り出せます。
Q. 子供たちの考えを引き出す工夫は?
A. 「企画書づくり」はどうでしょう。子供たちが考えた活動を実現させるために企画書を作るように促してみましょう。子供たちの考えを共有して、適切なアドバイスができます。ほかの児童と情報を共有することも大事です。
Q. たくさんの活動を一度に進めるのが難しいのですが……。
A. いろいろな人に力を借りましょう。卒業ムービー作成などは、保護者の中に堪能な方がおられることもあり、力を貸してもらえる場合もあります。
活動アイデア1 特別授業プロジェクト
「何のために」を大事に!
その先生との思い出に残る時間を作るために特別授業をしていただくという趣旨の理解を意識できるようにしましょう。いろいろな場面で、「感謝の気持ちを伝えるための時間である」ということもしっかり伝えるようにしましょう。
下準備をしよう!
あらかじめ、担任が特別授業をしてもらいたい先生(校長先生や、教頭先生、事務の先生、養護の先生、専科の先生、地域の方など)に、得意なことや子供たちとやってみたいことをリサーチしておきましょう。楽器を演奏できる、趣味で編み物をする、バドミントンクラブに所属していた、俳句づくりが得意など、子供たちが興味をもちそうなことを題材に授業をお願いできることがあります。内々に話をしておくことで、楽しく思い出に残る時間にできます。

お願いのしかたを指導しておく
基本的には、プロジェクト推進メンバーが、特別授業をしてくださる先生との連絡を行いますが、依頼の時や内容の相談に伺った時のお願いのしかた(言葉遣いなど) については、全体で指導しておきましょう(他のプロジェクトも同様なので)。
お礼のメッセージを推敲したり集約したりするのも子供たちに任せて、最後まで自分たちで行えるように支援しましょう。
活動アイデア2 チャレンジ受けて立ちますプロジェクト

趣旨の理解を促す
在校生との思い出に残る時間を作るために集会をするという趣旨の理解を促すよう工夫しましょう。「仲間と楽しく過ごす」ということを意識できるようにしましょう。

何を受けるかリサーチ
あらかじめ、自分たちの得意なことや好きなことをアンケートでリサーチしておくと活動がスムーズにスタートできます。自分たちは、どんな挑戦を受けることができるのかを整理し、下学年に伝えますが、時間的なことも考えてグループで実施する、代表が受けて立つなどの工夫をすることもできます。
各学級や先生方への周知も子供たちに任せて、最後まで自分たちで行えるように支援するとより自治的な活動になります。
活動アイデア3 簡単!いろいろな活動例を紹介
「準備に時間がかからない」「すぐできて楽しい」プロジェクトのアイデアもまとめて紹介します。自治的な活動の範囲で行うことが大切です。創意無限!
毎日席替えプロジェクト
「いろんな人と隣り合わせになってみよう」をコンセプトに、毎朝席順のくじ
を引いて、席替えをする。
簡単タイムカプセル プロジェクト
今の自分を表すもの……をメモ付きで、ガチャカプセルに入れる。
立つ鳥跡をにごさずプロジェクト
掃除の時間にひたすら教室をきれいにする。

コロナ感染症拡大予防のための活動の工夫
集会活動を行う場合
- 体育館で実施する場合、換気に努め、参加者が「密」に ならないようにする。全学年が一堂に会することができない場合は、学年ごとの発表を映像や音声にとって校内放送で流すなど、柔軟に対応する。
- 歌唱の場合は、同一方向を向き、一定の距離を保つようにする。
- 練習やリハーサルは、小グループやパートごとを基本とし、全員で集まって練習する機会を減らす。
- メッセージは、①手紙や寄せ書きにして届ける。②みんなの目に付くところ(階段の横長の垂直の部分など)に掲示する。

協力/福岡県川崎町立川崎東小学校教諭・柳井文陽
構成/浅原孝子
『教育技術 小五小六』 2021年2月号より
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