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特別対談「若手女性教師を育てるために大切なこと」

2020/1/15

若手教師の指導・育成に日々取り組む女性教諭のお二人、樋口綾香先生と岡本美穂先生のスペシャル対談企画! 若手教員の現状や指導の苦悩に触れて、効果的なアドバイスやNG発言など中堅教員に求められる指導術を、女性教師ならではの視点で語り合ってもらいました。若手もベテランも心が軽くなるヒントが満載です。

左)樋口綾香 先生 右)岡本美穂 先生
左)樋口綾香 先生 右)岡本美穂 先生

樋口綾香(ひぐち・あやか )
大阪府公立小学校教諭。Instagramでは、ayaya_tとして、#折り紙で学級づくり、#構造的板書、#国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書)ほか。編著・共著多数。

岡本美穂(おかもと・みほ )
大阪府公立小学校教諭。「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会(学力研)」に所属。著書に、『学び合い、支え合い、高め合い「あいの力」で子どものやる気を引き出す授業術』 (ナツメ社)等。

学年チームで連携して若手と一緒に成長しよう

― 30代中堅教員として、若手を育てなければならない現状について、どうお考えですか?

樋口:私が教師になった12~13年前は、指導してくださるベテラン教師がたくさんいらっしゃいました。一人や二人じゃなくて、常に誰かが教えてくださっていたように思います。

岡本:10年くらい前から、急にベテランがいなくなりましたよね。だから、私たち30代の中堅が若手を指導する立場になってきています。その年齢層には、産休・育休に入る女性教師も多いから、現実的にはかなりの少人数で若手を指導している現場が多いのではないでしょうか。

樋口:ベテランの少なさに対し、毎年4人ずつ、といったペースで新卒採用(以下:新採)は増えています。六学年の担任が、全員20代の若手なんてことも、今では珍しくありません。

岡本:そんな中でどう若手を育てるか。難しいけれど、私の場合、育てようと意識するのではなく、同学年の若手と「学年の子どもたちを一緒によくしていこう」という感覚でやっています。

樋口:そこは大事ですよね。若手にとって、教育書やインターネットで知識を蓄えることも必要ですが、やっぱり、頭でっかちではダメです。現場では同僚の先生方や子どもたちと話し合って出てくるものが、とても大きいですから。

岡本:最近の実習生や若手を見ていると、学生のうちに、現場に出てすぐにそれなりにやれるようにと、実践的な部分を叩き込まれているように思います。指導案の書き方から板書の書き方まで、私が大学生の時よりもかなり手厚く学んでいる。まじめな女子学生ほどそういう傾向が強いかもしれません。
だから新採はみんな、ある意味自信を持って現場に来るんですけど、どこかスマートすぎるし、「失敗が許されない」という思い込みも強い気がします。もっと先輩に相談しながら泥臭くやればいいと思うけど……。

樋口:私も今年、実習生を持ってみて、「指導案ははじめからきちんと書ける人が多いな」と感じました。でも、実際に授業をやってみると、多くの若手は、「思っていたのと違う」と感じて打ちのめされてしまう。実際の授業の子どもたちの反応や発言は、準備して想定した通りにはなりませんからね。
教師って、その場その場でとっさに、臨機応変に対応する力が、すごく必要です。だから若手は、できるだけ一人で抱えこまず、積極的に同じ学年の先輩に相談したり、やり方を真似してみたりしてほしいですね。

岡本:そうですね。だけど最近は、素直に相談してくれない若手が増えているようにも思います。恥ずかしがって相談できないのかもしれないし、私たちがすごく忙しそうに見えて、声をかけられないのかもしれません。
そんな若手が相談しやすい雰囲気や環境を、私たちの側からつくっていく必要もありますね。自分の悩みや失敗経験を率直に話して、先輩の側から積極的に自己開示することも大事なのかも。

樋口:失敗と言えば、時々、若手が失敗するまで放っておいて、「あえて失敗させて学ばせる」という方針の先生がいらっしゃいますよね。
成功体験をたくさん積ませてあげる方がいいと思うんですけど……。

岡本:学校現場での失敗は、子どもが犠牲になりますからね。とくに若手には、失敗はさせたらダメなんです。失敗した若手は自信を失ってしまって、そこから回復するのに2~3年はかかりますよ。自信を取り戻せず、辞めてしまう若手も最近は少なくありません。
若手の失敗をみんなでリカバーしようとするあまり、学年全体が苦しくなってしまうこともあって、さらなる失敗を呼ぶ種にもなります。

樋口:最近の若手は、ただでさえ「失敗は恥ずかしい」と思っていますからね。ミスを必要以上に叩く社会の風潮が、若手を委縮させてしまっているのかもしれません。
失敗しても「次頑張ろう!」「次はこうしよう!」って言える職場環境づくりをしていきたいですよね。

岡本:失敗したり、悩んだりしている若手を見かけたら、やっぱり同学年の先輩教師が相談に乗ってあげるのが、一番いいと思います。

樋口綾香さんと岡本美穂さん

女性教師ゆえの壁にぶつかる若手をどうフォローするか

―女性ゆえにぶつかる壁もありますね。そうした若手にどう関わっていくべきでしょうか。

岡本:若手の女性教員が、高学年女子と対立してしまう場合がありますね。以前、六年生を担任した時のことです。4学級あって、40代の男の先生と私、4年目の女の先生、3年目の男の先生の4人が担任していました。一学期当初、4年目の女性教員が、ある子どもとの関係がうまくつくれなくなって、「叱る指導」に困っていたんです。最初は彼女も一人で抱え込んでしまっていたのですが、聞いてみると、「叱り方が分からない」と悩んでいることが分かりました。
そこで、40代の男の先生と私の二人でその先生の学級に入り、その女子を実際に叱り、その場で見てもらったんです。どんな視線で、どんな空気をつくって、どんな言葉で指導するのかを実際に見て、感じてもらいました。その後、その先生は、初めて腑に落ちたと言っていましたね。その先生には「子どもに厳しい指導をした後は、必ず、『すっきりした? もやもやが残ってない?』と、確認することが大事だ」とも伝えました。

―厳しいお母さんと対立してしまう若手女性も少なくありませんね。

樋口:そうですね。でも、学級の子どもたちと確かな信頼関係を築いておけば、ある程度のことって、保護者は許してくれるものです。その信頼関係をどう築くかというと、やっぱり、子どもを認め、ほめることです。
1時間の授業の中で、いかにいいところを見つけてほめられるか。若い先生ほどそれができていません、私なんて、授業のはじめに机の上に教科書とノートが出ているだけでベタぼめですよ。意識すれば、ほめるポイントなんていくつでも見つかります。

岡本:吉永幸司先生(元京都女子大学教授・同附属小学校校長)の言葉で、大好きな言葉ですけど、「子どもはほめられるために学校に来ている」。

樋口:若い先生方にはまず、子どもとつながることを優先するよう伝えたいですね。例えば机間指導も、しんどい子の支援のためだけにするのではなくて、「普通にできている子」の「できていること」をどんな細かいことでも見つけてほめる方が大切だよ、って伝えたいです。

―中堅が若手を指導する際、外せないポイントって何でしょうか。こんな指導はNGだとか。

樋口:まず、共感することが大切だと思います。男性がモテるコツと同じで、とくに女性の話は、共感的に聞くことに徹する。中堅教師にありがちですけど、途中で「要するにこういうことでしょ」とか口をはさむのはNGです。

岡本:私は4月の最初に、若手と一緒に組む時、「1年後、どんな学級にしたいの?」と聞き、必ずそれを言語化するように伝えています。そこがなければ、どんな教育技術があっても無理ですから。去年一緒に組んだ子は、「自治的な学級がいいです」と言うので、「どんな自治にしますか」と掘り下げていきました。
そうやって話し合って、学年目標をつくり、その子の学級がしんどくなってきた時に、その目標に常に立ち返るように指導していきます。

樋口:かつては40代、50代のベテランがたくさんいて、若手に対し「明るいダメ出し、温かいダメ出し」をしてくれる関係性がありました。それが失われた今、中堅教師が注意しなければいけないのは、若手の実践を「頭ごなしに否定しない」ことだと思います
ある時、国語の授業で、板書に横書きを取り入れた若手の先生がいました。それを、中堅の先生が全否定している場面を見て、よくないな、と感じました。その若手は、しっかりした意図をもって横書きを取り入れていたのです。 新しいやり方を全否定するのではなく、「面白いやり方だね」「挑戦したんだね」と声をかけて、チャレンジの意図は汲んであげるべきだと思います。指導するのは、その後でもいい。

岡本:日々、新しいツールや指導法も出てきています。「こうでなければ」の押し付けは、誰も得をしないと思います。樋口先生のように、インスタグラムやTwitterで発信していくことも、若手にとってはいい刺激になると思うし、SNS上の憧れの存在って、若手には必要です。モチベーションが上がりますからね。

樋口:私は最近、若手に対して、「10年たったら授業もうまくなって、学級経営もうまくなって、仕事を楽に、早く終わらせて帰れるって思ってない? 絶対にそんなことないで」って伝えることがあります。
自分が本気で学びたい、成長したいと思って努力を重ねなかったら、10年たっても今のままだよって。私自身、国語が好きでずいぶん勉強したけど、じゃあ社会科に自信があるかって言ったら多分、新任の先生と変わらないレベルかな、と思っていますし……。

岡本:それ、ホントそう。私も今でも毎日めっちゃ不安ですよ。教師ってそういう仕事だからこそ、やっぱり先輩は若手が相談しやすい関係をつくらなくてはいけない。私が所属している研究サークルでは、集まったみんなで、自らのライフヒストリーを書いてみたことがあります。小学校、中学校……とどういう先生が担任だったかを書き出していくと、自分がいかに大きな影響を受けているかが分かります。
若手のそうしたライフヒストリーを知ることも、関係づくりの上では大切じゃないかと思います。昔はよく若手と飲みに行って、「どんな先生に出会った?」とか、意図的に聞いていましたけどね。毎晩のように、夜中の2時までとか(笑)。

樋口綾香さん

学校チーム全員で若手を育てるために

―学校全体で、若手を育てるために取り組んでいることはありますか?

樋口:私は今年、附属小から公立小に異動しました。附属小では、自分のクラスを見てもらったり、他のクラスを見たりして、お互いに学び合っています。学年や教科の枠を越えたグループになって、悩んでいることや新たな提案などについて、リフレクションしながら話し合っています。
外部から講師の先生をお呼びして、新たな考えも積極的に取り込むようにしています。思い出に残っているのは、北海道の藤原友和先生をお呼びして、「ファシリテーション・グラフィック」をテーマに話し合ったことです。

岡本:素敵ですね。思いつきですけど、例えば公的研修でも、10年研ぐらいで、他の学校の学級や授業を見に行くという制度をつくればいいと思います。できれば1週間くらい担任を入れ替えてしまうとか……。そういうことってとても大事だし、面白いと思います。

―平均的な公立小では、樋口先生のご勤務校のような研修はなかなか難しいでしょうね……。

岡本:そうですね。でも公立でも、別な形での勉強会を設けている地域や学校は多いですよ。東大阪市では、教科ごとの常任メンバーを中心に、放課後学習会が企画され、他校の先生方といっしょに学習する機会があります。
東大阪市の場合、遠方であれば出張扱いとなり、交通費も支給されますから、参加しやすくなってきていると思います。

樋口:若手にとっても中堅にとっても、学校の内外に自由に学べる場があるって、重要ですね。

岡本:私の今の勤務校は規模が小さいので、校内の教員同士いろんな話ができます。夏休みに自由参加で図書館に集まって教材研究をしたこともあります。
こういう集まりは昔からあったと思いますが、若手が学年や年齢を越えた先生たちの考えや実践について聞くことができて、新たな気付きを得られます。放課後などにお菓子を食べてお茶を飲みながら、子どものことを雑談的に話し合うだけでもいいと思います。まずは二人からでも始めて、それがじわじわと広がっていけばいいと思う。

樋口:学校全体として、若手が働きやすい環境をつくってあげることも大事だと思いますね。まずは会議の終了時間を決めるとか(笑)。

岡本:東大阪市では、今年から17時45分になったら自動的に留守番電話に切り替わるようになって、放課後の電話対応がなくなったので、早く帰れるようになりました。

樋口:最後になりましたけど、私は若手に、校内の黒子的な仕事、例えばトイレなど水回りの掃除、ごみ捨て、お花の水換え…そういう隙間の仕事をしている人に気付き、感謝できる人になってほしいと思います。
校務員さんだけでなく、人知れずやってくれるベテランの先生もいます。「そこに気付けるようになれば、きっと学級経営もうまくいくで」と伝えたいですね。

取材・文/青木真理 撮影/西村智晴

『教育技術 小一小二』2020年1月号より

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